(右から)岸田文雄首相、中国の李強首相、韓国の尹錫悦大統領=AP

 韓国を訪問した岸田文雄首相は27日、ソウルで中国の李強首相、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と日中韓首脳会談を約1時間15分実施した。採択された共同宣言では、過去に度々中断を余儀なくされてきた首脳会談を定期開催する必要性を再確認。「3カ国協力の制度化」を促進すると明記した。人的交流や気候変動、公衆衛生など6分野を中心にした協力プロジェクトを実施することでも合意した。

 日中韓首脳会談は2019年12月に中国・成都で開催されて以来、約4年半ぶり。

 共同宣言は「朝鮮半島と北東アジアの平和、安定と繁栄の維持は我々の共通の利益、責任だと再確認した」と強調。一方、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮問題をめぐる表現では「朝鮮半島の非核化、拉致問題についてそれぞれの立場を強調した」との記述にとどめ、「朝鮮半島の完全な非核化にコミットしている」とした前回から後退した。中国側が詳細な記述に難色を示したとみられる。

 25、26両年を「日中韓文化交流年」とすることでも合意。30年までに3カ国間の往来人口を4000万人に増やす目標を掲げた。

 経済・貿易分野では、19年11月を最後に交渉が中断している日中韓3カ国による自由貿易協定(FTA)について「独自の価値を有するFTA実現に向け、交渉を加速するための議論を続ける」とした。サプライチェーン(供給網)の協力強化も盛り込んだ。

 地域、国際情勢では、「国連憲章の目的および原則、ならびに法の支配および国際法に基づく国際秩序に対するコミットメントを再確認した」と明記した。国連安全保障理事会などで、3カ国が緊密な意思疎通を図る「決意を新たにする」とした。

 岸田首相は会談後の共同記者発表で「地域の平和と繁栄に大きな責任を共有する3カ国で幅広い分野で協力を進める決意を再確認した」と強調。北朝鮮の非核化と朝鮮半島の安定が「3カ国の共通利益であると確認した」とした上で、拉致問題解決への中韓首脳の理解を得たとした。首相は次回議長国として「日本開催に向け、力を尽くす」と述べた。

 今回の議長だった尹氏は「今日を起点にサミットが正常化され、協力体制が発展する土台が作られた」と表明。李氏は次回首脳会談開催について「日本が責任を果たし、首脳会談を開催することを支持し、協力する」とし、「相互信頼を増やし、中日韓協力の長期的・安定した発展を推進する」と語った。【ソウル森口沙織、日下部元美】

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