【パリ=板東和正】ドイツのショルツ首相は14日、中国の重慶を訪れ、訪中を開始した。16日に北京で習近平国家主席と会談する。中国の人権侵害やウクライナ侵略を続けるロシアへの対応のほか、欧州市場での中国企業による競争の阻害をめぐる問題が議題になる。ドイツは最大の貿易相手国である中国への依存から抜け出せずにおり、ショルツ氏が会談で強気の姿勢を示せるかは不透明だ。
ショルツ氏が訪中して習氏と会談するのは2022年11月以来となる。
欧米メディアによると、ショルツ氏は習氏との会談で、新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権弾圧や台湾に対する軍事的圧力をめぐって厳しい態度で臨む構え。ウクライナ侵略をやめさせるようプーチン露大統領に働きかけるよう要求する見通しという。中国政府の補助金を受けた企業が欧州連合(EU)市場で競争を歪めているとされる問題についても意見交換する。
EU欧州委員会のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は9日、中国の風力発電タービン企業への調査を開始すると発表。欧州委は中国製の電気自動車(EV)や太陽光パネルへの調査も行っており、中国による不当な補助金支給が確認された場合、追加課税に踏み切る方針だ。欧州の外交専門家は「EUは域内最大の経済国ドイツが補助金問題について、強い態度で中国を追及することを求めている」と分析する。
ただ、ドイツは中国との経済関係を重視しており、会談では中国と「親交を深めることを優先する」(仏紙ルモンド)とみられる。
ドイツ経済研究所(IW)によると、ドイツの昨年の中国への直接投資額は119億ユーロ(約1兆9400億円)で、過去最高を記録。中国は16年から8年連続でドイツの最大の貿易の相手国となっており、特に自動車産業は対中依存が強い。独フォルクスワーゲンは中国市場の販売が全体の半数近くとされる。ショルツ政権は昨年7月、中国の覇権主義的な動きを受け、発表した中国戦略で独企業が中国市場への依存を深めることに警鐘を鳴らしたが、中国はいまだにドイツの「グローバルビジネスの柱」(米メディア)だ。
ショルツ氏は12日、訪中を前に「中国は依然として本当に重要な経済パートナーだ」と強調した。14日の重慶訪問では、独自動車部品企業の工場を視察。15日には上海で独企業を訪問する。同氏は中国の報復を懸念し、EUによる中国企業への追加関税の必要性について否定的な見方を示している。
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