閣議で演説するイランのモフベル暫定大統領(左から2番目)=テヘランで20日、イラン大統領府提供・WANAロイター

 イランのライシ大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡したことを受け、イラン政府は20日、緊急の閣議を開催し、「ライシ師の道を継続する」との声明を出した。イランメディアが報じた。保守強硬派のライシ政権は米欧と激しく対立する一方、中国やロシアとの友好関係を築いてきた。後継のモフベル暫定大統領もライシ師同様、反米強硬路線を追求する方針だ。

 イラン外務省などによると、モフベル氏は就任直後の20日、プーチン露大統領と電話協議し、両国間の連携を維持することを確認。事故で死去したアブドラヒアン外相の後を受け、就任したバゲリ外相代行も同日、中国の馬朝旭外務次官との電話協議で「引き続きあらゆる分野で協力を深める」と伝えた。

 また、イラン政府は次期大統領選を6月28日に実施することを決めた。5月30日から立候補者の登録が始まり、6月12日に選挙戦に入る。指導部が保守強硬路線の継続を目指す中、有力な候補者が出てくるのかが焦点だ。

 イランでは最高指導者が任命した聖職者らでつくる「護憲評議会」が立候補資格の事前審査を行う。2021年の大統領選では穏健派や改革派の有力者が軒並み失格となり、ライシ師が勝利したものの、投票率は過去最低を記録した。指導部は保守強硬派の大統領就任を目指すとみられるが、一定の投票率を確保し、政権の正当性を高める必要にも迫られている。

 一方、イランメディアは、墜落したヘリコプターが米国のベル社が1960年代に開発した「ベル212」であると報じた。ロイター通信によると、機体は79年のイスラム革命前に導入されたという。イランは当時親米国家で、米国から多数の航空機やヘリを購入していた。革命後、対米関係の悪化や経済制裁で輸入が難しくなり、イランでは現在も革命前の古い機材が使用されている。

 米メディアによると、イランのザリフ元外相は今回の墜落について、米国による制裁が要因になったと主張した。これに対し、カービー米大統領補佐官は20日、「全く根拠がない。どの国も機器の安全性を確保する責任がある」と反論した。【カイロ金子淳、ワシントン松井聡】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。