2期8年にわたって台湾の総統を務めた蔡英文氏(67)が20日退任した。台湾初の女性総統となった蔡氏は中国が統一を迫る難しい環境の中で台湾の国際的存在感を高めたほか、日本で災害などが起きた際に即座に日本語で見舞いのメッセージを寄せるなどし、内外にファンを作った。蔡氏は政治の一線を離れるが、今後の活動にも注目が集まりそうだ。
蔡氏は19日に自身のフェイスブックに投稿し、任期中の支持に対する感謝とともに「これからは違った立場で皆さんと、台湾と肩を並べて進んでいく」と述べた。これに対し、2万件以上のメッセージが寄せられ、その多くは「小英(蔡氏の愛称)総統、8年間台湾を守ってくれてありがとう」「同性婚法制化で(同性愛者として)幸せな結婚をイメージできるようになった。台湾にあなたがいたことを誇りに思う」などと蔡氏をねぎらう内容だった。
蔡氏は対中関係などに冷静に対処する姿勢で評価を集めたほか、猫好きなどソフトな一面を売り出すイメージ戦略も奏功し、民進党以外にもファンを広げた。新型コロナウイルス流行に伴い、日本政府が東京などに緊急事態宣言を発令した2020年4月には、ツイッターに「手を携えてこの闘いに勝ちましょう」と日本語のメッセージを送った。
蔡氏は15日、世界的に活躍する台湾人の「(鮮やかな衣装や化粧でパフォーマンスをする)ドラァグクイーン」を総統府に招いた際、退任後について問われ、3日間何も考えずに眠りたいと回答。「東京の街を歩くのが好きだが、政治家になってからはできなくなった」と話した。台湾を自国の一部と見なす中国は台湾要人による国際的な交流に神経をとがらせていて、台湾側が訪問先に配慮せざるをえない事情がある。
蔡氏の前任である国民党・馬英九元総統は退任後、中国を訪問して要人と会談するなど一定の影響力を発揮している。台湾メディアからは蔡氏が退任後、国際的なシンクタンクを主宰するとの見方などが出ている。【台北・林哲平】
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