ベトナムの新たな国家主席にトー・ラム公安相(66)が就任する人事が固まった。地元メディアによると、20日から始まった国会で選出される。国家主席は憲法上の国家元首で、一党支配体制を敷くベトナム共産党の内部ではグエン・フー・チョン書記長(80)に次ぐ序列2位。国家主席が2代連続で辞任した異例の事態の後を受ける形となる。
ラム氏は北部フンイエン省出身で、1979年に公安省入りした。2016年には党政治局員となり、公安相に就任した。トップのチョン氏が進める反汚職運動の実務を担ってきたことから、信任は厚いとされる。前任のボー・バン・トゥオン氏が23年3月に国家主席に選出された際にも候補の一人として名前が挙がっていた。
国家主席は、書記長、首相、国会議長と共に「四柱」と呼ばれる最高指導部の一人だが、この1年ほどは交代が続いた。
前々任のグエン・スアン・フック氏は23年1月、新型コロナウイルス対策に絡む汚職事件で引責辞任した。次いで前任のトゥオン氏も今年3月、党の規則に違反したとして突如、辞任を表明。詳細は不明だが、何らかの汚職事件に関連した事実上の更迭とみられている。
反汚職運動は11年に書記長に就任したチョン氏の肝いりで、党幹部に加えて企業経営者らの逮捕も相次ぐ。チョン氏は21年の党大会を経て、3選を禁じる党の規定を超越する形で3期目に入った。「反汚職」のスローガンをテコに、自らへの権力集中を進めているという見方もある。次期党大会は26年に予定され、高齢のチョン氏の後継者選びにも注目が集まる。【バンコク武内彩】
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