全国25道府県知事で構成する「日本創生のための将来世代応援知事同盟」サミットが15日、宮崎市で開かれた。18府県の知事・副知事が出席し、人口減少対策を巡り熱い議論を繰り広げた。民間の有識者グループ「人口戦略会議」が4月に「消滅可能性自治体」を公表したばかりの会合で、知事らは何を語ったのか。
知事同盟は2015年4月、12県(当時)の知事らが結成した。人口減少に歯止めをかけ、地方への人の流れをつくり、東京一極集中型社会を変え、若い世代の希望がかなう社会の実現を目指す――という理念を掲げ、各地でサミットを開いている。
今回は人口戦略会議が全国市区町村の約4割、744市町村が「消滅可能性自治体」に当てはまるとの試算を4月に公表した直後の会合。出席した16知事と2副知事によるトークイベントでは、人口減少対策について活発な議論が交わされた。
知事たちが活発に議論
対策として、東京一極集中の是正を国に求めたのは、島根県の丸山達也知事だ。「雇用が集中しているので人口が集中する構造。制度的に分散してもらい、出生率の低い所から高い所に人が移れば出生数が増える」と指摘する。福井県の杉本達治知事も一極集中の是正に向けて国が本腰を入れた対策を取るよう求め、三重県の一見勝之知事は「本気度を示すため担当大臣や専門部署を設置するよう国に強く求めたい」と具体策に踏み込んだ。
全国で平等な行政サービスが受けられることの重要性を語りかけたのは、岩手県の達増拓也知事。「さまざまな子育て支援策を国と地方で連携してやっていくことが必要だ。子ども医療費助成や保育・教育の無償化は、自治体の財政力の差によらず、全国どこの地域でも同等の水準で行われるべきだ」と話す。長野県の阿部守一知事は「多極分散型の国土政策、国と地方の役割分担について、国家ビジョンとしてまとめていくことが重要だ」と述べた。
国民の危機意識共有を
国の人口動態統計(速報値)によると、23年の出生数は75万8631人と前年比で5・1%減少し、過去最少を更新した。国の研究機関が公表している長期推計によると、2100年の人口は6300万人へと半減する見通し。
同会議議長の三村明夫・日本製鉄名誉会長は「多くの国民の危機意識の共有が必要だ。対策は現在、効果は将来というのが人口減少問題の肝だ」と指摘する。サミットでの知事らの議論を振り返り、「この問題に真剣に取り組まないと、もう明日はないという危機意識にあふれた中身だった」と講評した。
またサミットでは、「東京一極集中の是正」「少子化に歯止めをかける自然減対策」「持続可能な地域づくり」を強力に推進するよう国に求める緊急アピールをとりまとめた。【下薗和仁】
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