水戸京成百貨店=水戸市泉町1で、長屋美乃里撮影

 「水戸京成百貨店」による雇用調整助成金不正受給事件で、詐欺罪に問われた元取締役総務部長、片岡卓也被告(58)の初公判が15日、水戸地裁(村山智英裁判官)であり、片岡被告は起訴内容を認めた。検察側は冒頭陳述で、片岡被告らが雇調金申請を検討時、既に従業員らが出勤を重ねていたため、勤怠データを改ざんし休業日数を水増ししたと明らかにした。

 起訴状によると、片岡被告は、元社長の斎藤貢被告(66)=千葉県柏市、同罪で起訴=や部下4人=いずれも不起訴=と共謀し雇調金を詐取したとされる。片岡被告に関わる立件額は、斎藤被告の退任後も含む2020年4月~22年8月分の約10億7000万円。15日は初期の約1億3000万円分を審理し片岡被告は「相違はございません」と認めた。

 検察側は、片岡被告が斎藤被告から再三、休業日数の水増しを容認や示唆するメッセージなどを受けたと主張している。

 冒陳によると、百貨店は新型コロナウイルスのまん延で20年4月から臨時休業。同月下旬~5月上旬に斎藤被告が片岡被告に、従業員になるべく多くの特別休暇を取らせて雇調金を申請する方針を示した。

 片岡被告は、その時点で既に多くの従業員が出勤を重ねていたため、4月11日~5月10日分の特別休暇数と雇調金を増やすのは難しいと説明。だが斎藤被告は、従業員にとっては勤務時間を基にした支払いでも休業手当でも問題ないという趣旨を述べたという。

 その後、片岡被告らは実際の特別休暇取得数と、特別休暇数を水増しした場合に応じて赤字額などを推算した資料を斎藤被告に提示。実際の休暇数を基にした推算を「総務部の意見」としたが、斎藤被告は片岡被告に「君らの資料ならば、賃金遅らせるしかない」「勤怠の考えに誤りがなかったか? 誤りがあったとすれば、修正すべき」などと「修正」を示唆するメッセージを送信。片岡被告が5月19日、特別休暇数の水増しを前提とした推算資料を改めて示すと、斎藤被告は「それでやるしかないだろう」と応じたという。

 公判では、片岡被告が斎藤被告から「勤怠データの改ざんではなく修正。給与が変わらなければ誰も文句を言ってこない」と言われたとする供述調書も証拠として採用された。【斉藤瞳、西夏生】

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