仮処分申請を却下する決定を受け、垂れ幕を掲げる住民側の関係者=松江市で2024年5月15日午前10時4分、松原隼斗撮影

 中国電力が12月に再稼働を予定している島根原発2号機(松江市)について、広島高裁松江支部は15日、地元住民らが中国電に運転の差し止めを求めた仮処分申請を却下する決定を出した。松谷佳樹裁判長は地震や火山などの対策に不合理な点はないうえ、「重大な事故が発生する具体的な危険性があるとはいえない」と判断した。

島根原発

 島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地しており、2号機は2012年から定期検査で停止中。中国電が現在、再稼働に向けて安全対策工事を進めている。仮処分は島根、鳥取両県の住民4人が申し立てた。

 決定はまず、原発施設の耐震設計で目安となる「基準地震動」の妥当性を検討した。想定される最大の揺れが820ガル(ガルは加速度の単位)とされているのは「保守的に設定したうえで、国の原子力規制委員会の確認を経ており、審査に過誤や欠落はない」と述べた。

 続けて、原発の南西約55キロにある三瓶山が噴火した場合の影響については、中国電の想定に合理性があると判断した。原発30キロ圏内には計約45万人が暮らしており、原発事故が起きた際の避難計画も争点になったが、「事故が発生する危険性が立証されていない」と指摘。計画の実効性などの判断に踏み込まなかった。

中国電力島根原発を巡る主な経緯

 島根2号機は出力82万キロワットで、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉。21年に福島事故後の新規制基準への適合審査に合格した。1号機は廃炉作業中で、3号機は建設が進められている。

 2号機を巡っては、地元住民らが運転差し止めを求める正式裁判も高裁松江支部で続いている。住民側は今後、この裁判での主張に力を入れていくという。中国電は「妥当な決定をいただいたと考えている。引き続き安全対策工事を進める」とのコメントを出した。【目野創、松原隼斗】

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