山梨県は13日、富士山の混雑を緩和するための登山者の入山規制を発表した。こうしたなか、富士山の新たな撮影スポットに外国人観光客が多く集まり、迷惑行為が問題となっている。

■「富士山夢の大橋」撮影殺到 感動の一枚

 山梨・富士河口湖町で、「富士山とコンビニを撮影できる」と外国人観光客が殺到する場所では迷惑行為が相次ぎ、富士山を見えなくする黒幕の設置工事が行われる事態になった。

 富士山を挟んだ隣の静岡県では、新たな映えスポットができていた。富士市を走る国道139号「富士山夢の大橋」。今、橋につながる階段には、大勢の外国人観光客が押し寄せている。

 指示を出しながら、写真を撮り始める外国人観光客。一人が写真を撮り終えると、交代で撮影。なぜ、これほど多くの外国人観光客が集まっているのか。 

タイからの観光客
「TikTokを見てきました」
「有名な写真スポットとして紹介されていますよ」

 実は去年11月ごろから、富士山までまっすぐ続いているように見える階段が「富士山に登る階段」として、SNS上で話題になっている。

トルコからの観光客
「山と階段が一直線になっていて美しいです。思い出を残すために、すべての瞬間を撮ろうとして100枚くらい撮っちゃいました」

 トルコから来た男性のお気に入りは、階段の頂上で富士山をバックにポーズを決めた1枚の写真。撮影を待つ人の中には、椅子に座って順番待ちをする人までいる。

ブラジルからの観光客
「階段で写真を撮りたいけど、人がいるので待っています」

 ようやく女性の順番になり、撮影を開始。

ブラジルからの観光客 
「(Q.良い写真撮れました?)はい。撮れました」

■危険!外国人観光客が次々と車道で撮影

 外国人観光客でにぎわうのは、階段だけではない。目の前に広がる雄大な富士山を写真におさめようと、橋の上にも大勢の外国人観光客がいた。

 しかし、歩道と車道の間にある柵に座り、車道に身を乗り出しポーズを決める人も。さらに車道を横切って、中央分離帯へ移動し、撮影する人が続出している。

 横断禁止の注意書きが貼られているが、富士山を背景に撮りたいのか、車道の真ん中で写真を撮る女性2人。その脇を車が避けるようにゆっくりと走っていく。

 中央分離帯に入り、富士山をバックに撮影していた家族連れ。父親と思われる人物は、体をよじりながら大ジャンプ。このグループは、車道の真ん中で、歩くポーズで記念撮影。

 写真を撮ろうとするのは歩行者だけでなく、車道には路上駐車ができないようにパイロンが置かれているが、その途切れた先で車を止め、写真撮影する人の姿も見られた。

 橋の上を走行する車から見ると、撮影に夢中になった観光客がいつ車道に飛び出すか分からない危険な状況だ。

 スーツケースを引きながら、車道で撮影していた人に話を聞いた。

車道で撮影 中国からの観光客
「危険と分かりつつも、あの場所は車が入ってこないので、入っても大丈夫かなと思い、皆写真を撮っているんだと思います」

富士山夢の大橋を管轄する
国土交通省中部地方整備局 静岡国道事務所
「本来、人が立ち入る場所ではないので、何らかの対策をしなければいけないと話をしていて、柵の設置を検討しているところです」

■ポイ捨て・私有地侵入…深刻な迷惑行為

 迷惑行為は、これだけではない。橋の近くには、ごみのポイ捨てがあった。空き地となっている私有地へ勝手に立ち入り、遊ぶ家族連れの姿も。さらには、駐車場があるものの、路上駐車をする車も見られた。

近所の人
「ここ私道なんですけど、車がいっぱいだとここでUターンしてという形で、ここに乗り上げられて花壇が剥げている。いつ車にぶつけられるか、家までぶつけられるか分からないので怖い」
「本当に悪いんですけど、迷惑です。声が大きい。うちはすぐそこなんですけど、窓は今閉めているけどこれから開けるようになると、本当に迷惑だなと思って。だって朝6時前ですよ」

 突如として多くの外国人観光客が訪れるようになった富士市の担当者は、次のように話す。

富士市交流観光課 松村岳典課長
「色々な所に多言語化した看板を付けたり、違法駐車ができないようにバリケード設置したりとか。駐車場を急きょつくったり、そういう対応をしています。この辺りに住まわれている方にご迷惑が掛からないように、何かできることはないかということで、一つひとつ潰しているところが現状です」

■「富士山入山規制」発表 衝撃の登頂渋滞

 富士登山で問題となっているのが、登山者の混雑。登山道を埋め尽くす人、人、人。ヘッドライトの灯りが、山頂までズラッと続く。さらに、軽装登山やたき火などのマナー違反が続出した。

 山梨県は13日、富士登山の問題を解決すべく新たな対策として、富士山の入山規制を発表した。

 7月から吉田ルートで通行料として2000円を徴収するほか、登山者の上限を一日4000人に制限。混雑やトラブル回避のため予約システムを導入し、20日から受け付けを開始する。

 去年撮影された映像には、頂上を目指す人たちの大行列が捉えられていた。なかなか先に進むことができない。

 進入禁止エリアで休憩する人たちが、パトロール員に「ここちょっと移動お願いしますね」と注意されると…。

外国人登山客
「分かるけど、一気に上がれないじゃん。見てよ」
「一気に上がれるの?上がれないでしょ」

 登山者の増加で、山小屋の多くは満室となっていた。

外国人のグループ
「(Q.これから山に登る?)はい。登ります」
「(Q.宿とかホテルは?)取っていません」

 宿泊をせず、一気に山頂を目指す弾丸登山も増加している。山小屋前で過密状態で座り込む人や、地面に直接寝そべり、仮眠を取る人もいた。

 無謀な登山や混雑などの解消を狙う入山規制について、5合目を訪れていた人は次のように話す。

日本在住の中国人
「(通行料)取るのは、当たり前と思っている」
「(Q.(通行料)中国でもあるんですか?)登山料は必ずあるので」
「(Q.いくらですか?)だいたい1500円。山によってですね」

ポーランドからの観光客
「登るために来たのに『人数規制で登れません』と言われたら、悲しい気持ちになるので、それは良くないかもしれません」

■「登山鉄道構想」混雑緩和見込むも…賛否の声

 富士山の混雑緩和に向けた構想は他にもある。「登山鉄道構想」だ。
 
 富士山の麓から5合目をつなぐ有料道路上に振動や騒音が少ない路面電車「LRT」を導入した場合、来訪者数がコントロールでき、混雑緩和が見込まれる。

 またバス・タクシーを含む一般車両を規制することで、排出ガスの削減に取り組めるとしている。

山梨県 長崎幸太郎知事
「自然を破壊するものではありません。道路上に路面電車の軌道を敷いてやりますので、新たなトンネルを掘るとか大規模な伐採をするとか、そういうことは一切考えてない」

 一方、雪崩や土砂崩れなどが繰り返されていることから、地盤の不安定さを心配する声が上がっている。

反対署名活動の発起人 渡辺果林さん
「今はEVバスがあるということで、わざわざそっちを使わないで、自然を壊して鉄道にするのはちょっと違うんじゃないかなと」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年5月14日放送分より)

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