男性が大半を占める総合職限定の家賃補助が、男女雇用機会均等法で禁じられた差別に当たるかが争われた訴訟の判決で、東京地裁(別所卓郎裁判長、瀬田浩久裁判長代読)は13日、「間接差別」に当たると判断した。その上で、大手ガラスメーカー「AGC」の子会社で一般職として働く原告の女性(44)の賠償請求を認め、子会社に約378万円を支払うよう命じた。
均等法は、性別を理由に差別的扱いをする「直接差別」だけでなく、合理的な理由がないのに実質的に性別を理由とする差別につながる恐れがある措置も「間接差別」として禁じる。原告側によると、間接差別を認めた判決は初という。
判決によると、女性は2008年から、AGC子会社の「AGCグリーンテック」(東京都千代田区)の正社員の一般職として勤務していた。子会社には総合職であれば会社が住宅の借主となって家賃の最大8割を負担する社宅制度があるが、女性は一般職のため最大1万数千円の住宅手当しかもらえなかった。
判決は、総合職にのみ適用される手厚い家賃補助の経済的恩恵の格差は「かなり大きい」と指摘。子会社で1999~2020年に勤務した総合職計34人のうち女性は1人しかおらず、判決は、事実上、男性のみに適用される福利厚生だったと指摘した。
会社側は「総合職のみに制度を認めているのは転勤の可能性があるためだ」と主張したが、判決は、総合職なら転勤の具体的可能性の有無を問わず制度が利用できていたとし、制度を総合職に限定することに合理的理由はないと認めた。制度が使えなかったことで生じた損害に加えて、慰謝料50万円の賠償も命じた。
判決後に記者会見した原告代理人の平井康太弁護士は「画期的判決。他の待遇でも間接差別が認められる余地があり、女性差別の是正を図る道を開いた」と評価した。原告女性は「待ちに待った答えをいただけた。他会社の似た待遇も改善されてほしい」と述べた。
AGCグリーンテックは「判決文を受け取っておらず、コメントは差し控える」とした。【巽賢司】
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