親に虐待された疑いがある子どもから正確な状況を聞き出すにはどうすればいいのか。例えば、子どもが「ママにドンってされた」と話した時、「ママにたたかれたの?」と質問してはいけないのだという。そんなことを学ぶ講習会が香川大学教育学部付属坂出小学校(香川県坂出市)であった。【佐々木雅彦】
子どもは出来事を順序立てて話すことが難しい上に、身近な大人の意見に迎合しやすい。質問の仕方によっては暗示や誘導を受けやすく、記憶が書き換えられることもある。
その解決策として捜査の現場では、警察、検察、児童相談所が連携して子どもから原則1回で聞き取る「司法面接」が導入されている。誘導的な質問を避けて、子どもが自発的に語れるような雰囲気づくりを心がけ、繰り返し話を聞かれて被害を再体験させる2次被害を防ぐ手法だ。
講習会は香川県警人身安全・少年課と坂出署が主催。同課の三好弘美・虐待対策主任専門官が講師を務め、同校の教職員ら約20人が参加した。三好さんは「先生は子どもの異変を最初に気づける立場だ。司法面接にスムーズにつなげてもらうためにも、子どもの話をありのままに聞き取ることが大事」と語り、司法面接にならった聞き方を具体的に説明した。
まず、話を聞く場所について「他の児童から見えたり話し声が聞こえたりする場所は、プレッシャーになるので避けてほしい」と話し、子どもが落ち着いて話せる場所に移動することを勧めた。
聞く際のポイントとして、目線は子どもと同じ高さにする▽真正面ではなく横や斜めから表情が見える位置で▽遠すぎず、近すぎない距離(50センチ程度)を保つ――の3点を挙げた。
さらに、子どもの言葉を遮って聞き返したり、詳細を詰めたり、「はい」か「いいえ」で答えさせるような質問をしたりするのは好ましくないと指摘。「何があったか教えて」「何か心配なことがあった?」「その後はどうしたの?」などと問いかけ、やり取りをそのままメモするようアドバイスした。
もし、子どもの言葉の意味が十分に分からない時は、どう問えばいいのか。三好さんは「ドンってされた時のことを詳しく教えて」と、子どもが使った言葉や仕草で尋ねるよう求め、「何か決めつけた質問はしないでほしい」と呼びかけた。
また、最初に被害を打ち明けられた教員が最後まで一貫して話を聞くよう助言。例えば担任が管理職に報告し、複数の教員が聞き取りの場に同席することになった場合、担任が聞き役となり、他の教員は記録役に徹するなど役割分担することが大事だという。
取材記者の一言
「先生方はいつも、子どもに合わせた話し方を工夫されていると思う。でも心配のあまり、踏み込んで聞きすぎていませんか」。三好さんは講習会の冒頭、こう投げかけた。子どもと接する大人は何も教職員に限らない。読者の皆さんにもぜひ、講習内容を伝えたくなった。私自身、「ママにたたかれたの?」と聞くのは駄目だという指摘に、まさに目からうろこが落ちた思いだった。
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