開幕まで1年を切った大阪・関西万博。複数の国への取材でわかった“工事の遅れ”。そして2回の増額で当初のおよそ2倍となる2350億円になった会場建設費など、1649億円に及ぶ国費負担の問題。現地で取材を進めると、様々な課題が見えてきました。(4月13日OA「サタデーステーション」)
■着工は14カ国のみ 海外パビリオン建設に暗雲
万博の会場には、大屋根のリングの外側に国内の自治体や企業が出展する国内パビリオン。リングの内側には8つのテーマ館と海外パビリオンがつくられる予定です。
今回、私たちは万博会場の中を特別な許可を得て取材。いままさに建設が進む現場をみせてくれたのは、オランダ館です。中央に球体を配置した外観デザインが特徴のオランダ館。施設内では、水からクリーンエネルギーを生成する新技術を展示する予定です。万博協会が示した工事完了の目安は、建物本体が10月中旬、内装が来年1月中旬。順調にいけばオランダ館は期限内に完成できるそうです。
万博に参加表明している161の国と地域のうち、オランダ館のように参加国が独自に設計・建設する「タイプA」で出展する国は50数か国。そのうち着工済みは14か国で、およそ15か国はいまだ工事業者すら決まっていない状況です。
今回、私たちは48か国に取材を依頼し、何らかの回答があったのは24か国。そのひとつ、インドネシアは、協会が示す10月中旬の建物本体の完了は達成不可能だと話します。内装の工事は1月中旬が目安のところ、2月中に完了する予定です。
インドネシア館の責任者 ビビ・ユラスワティさん
「他国も同じ課題があると思いますが、建設許可の手続きに時間がかかるのと、原料費や人件費の高騰により資材や人を確保できない可能性があるため、戦略を立てなければいけないからです」
理由のひとつが「建設費高騰」。資材価格の高騰に加え、時間外労働の規制が強化される「2024年問題」により、人手の確保も難航しているのです。
一方で、開幕までに工事が完了しない国が出てくる事態も現実味を帯びています。協会のある関係者は、「いま工事業者すら決まっていない国はデッドラインを過ぎた」「全ての国で間に合わせるようにする目標は変わらないが、達成できなかったとしても大目にみてほしい」と話しています。
■“最大の課題”は「交通アクセス」 バス運転手不足も深刻
1日に最大23万人の来場が見込まれる今回の万博。主な交通手段は、新設される会場直結の地下鉄新駅と主要駅からのシャトルバスです。会場のある夢洲へ繋がる道路は“2本だけ”。島には、万博期間中に工事が本格化するIRの予定地やコンテナターミナルがあるため、大型車両が行き交い、ここにシャトルバスが加わることで、相当な渋滞が懸念されます。万博の国際機関トップも、交通アクセスが“最大の課題”と強調しています。
さらに、取材を進めると、主要交通手段となるシャトルバスでは別の課題も抱えていることがわかりました。
取材したバス会社は、万博へ200台のバスを出してもらえないかと協力を要請されといいます。悩みの種は“運転手の確保”です。運転手不足は深刻で、万博協会によると主要な路線「JR桜島駅〜万博会場」シャトルバスでは、運転手が180人必要なところ、100人程度不足している状況です。
大阪バス西村信義社長
「頑張ってやりたいと思ってるけどね。なんせ人が要る。みんな他の仕事持ってるので、なかなかうまいこと集まらないんです。結局、幼稚園の遠足とかみんな断らないといけない」
コロナ禍で大幅に人員を減らしたバス業界。すでに別の仕事に就いている人も多く、新たに運転手を募集しても集まらないといいます。この会社では、他の業務の運転手を万博に回すなどして人員をかき集める予定です。
大阪・関西万博まであと1年。山積みの課題にどう対処していくのでしょうか。
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