水俣病の患者・被害者らと伊藤信太郎環境相との懇談の際に被害者側の発言が制止された問題で、環境省は8日の衆院内閣委員会で「これまで準備してきた対応例にならい、事務方の判断で行ったものであり、大臣の指示を受けたものではない」などと釈明した。
環境省の神ノ田昌博環境保健部長は質疑で、発言が制止された経緯について「懇談ではこれまでも各関係団体の発言時間に大きな格差が生じたり、大臣から回答する時間を十分確保できなかったりという進行管理上の問題が生じていた」としたうえで、「このため従前よりマイクの音を切るという対応も含め、環境省の事務方で対応例を準備してきた」と説明。実際に音を切ったのは「今回が初めてだ」と答弁した。
立憲民主党の中谷一馬氏が「事務方の誰が発言をさえぎる指示を出したのか」とただしたのに対し、神ノ田氏は「特定の人が指示を出して(マイクの音を)切ったということではなく、それぞれ役割分担する中で対応が取られた」と述べるにとどめた。マイクの音を切って発言を制止する対応例が省内で作成された経緯については「どの時点で組み込まれたか、経緯は確認できていない」とした。
林芳正官房長官は質疑で「関係者の方々を不快なお気持ちにさせる不適切な対応だった」としたうえで、「政府としても、私からもおわびを申し上げたい」と陳謝した。中谷氏は「音声が出ないようにして発言をさえぎるという行動は、岸田政権の『聞く力』のなさを体現する大変残念な出来事だ」と批判した。
一方、立憲は同日、国会内で環境省の大森恵子官房審議官らへのヒアリングを実施した。伊藤氏は記者会見で「7日に初めて報告を受けた」と述べており、出席議員は対応の遅れを指摘した。
大森氏は、伊藤氏からは「後半の連休に入るか入らないかくらい」に1日の対応について確認するよう指示があったとし、「事実関係を整理して報告したのが7日になった」と釈明した。3分間でマイクを切る運用を定めたマニュアルはないとし「前年のやり方を前の担当者に聞いて勉強した」と説明。出席議員からはマイクを切る運用をやめるよう要請されたが「限られた時間の中でどのようにすればみなさんの意見がうかがえるか、知恵を出して考えていきたい」と述べるにとどめた。【鈴木悟、田辺佑介】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。