水俣病患者らでつくる団体との懇談を終え、会場を後にする際に発言中にマイクの音が消えたことなどについて問われ、発言者の方を見る伊藤信太郎環境相(右奥)=熊本県水俣市で2024年5月1日午後4時48分、吉田航太撮影

 環境省職員が水俣病被害者側の発言中にマイクの音を切った問題で、伊藤信太郎環境相は熊本県水俣市を再訪し、被害者らに直接謝罪する事態に追い込まれた。

 1日の患者や被害者らとの懇談後、伊藤氏は記者会見で職員がマイクを切ったことを「認識していない」などと発言した。大型連休中にこの問題に関する報道が相次いでいたが、事務方が伊藤氏にマイクを意図的に切ったことを正式に報告したのは、連休が明けた7日午前だった。

 伊藤氏は7日昼、懇談の場で司会をしていた同省特殊疾病対策室の木内哲平室長に対し、現地に謝罪に行くよう指示。木内室長は同日夕方、報道機関向けの説明の場で職員だけで赴くと説明していた。

 ところが同日夜、一転して伊藤氏も謝罪に行くことを決定。8日の報道陣の取材に対し「私もいろいろ日程があるので、昨日(7日)急に行くわけにもいかなかった」と釈明し、涙ぐみながら謝罪した。

水俣病被害者側の発言の途中でマイクを切ったことについて謝罪する伊藤信太郎環境相=東京都千代田区で2024年5月8日午後0時9分、山口智撮影

 環境省幹部の1人は「水俣病は環境省(旧環境庁)が発足した原点。重く受け止めたのではないか」と話す。伊藤氏は対応が不適切だったとして、和田篤也次官と神ノ田昌博環境保健部長に対し、口頭で厳重注意した。

 懇談から1週間以上経過してから謝罪するなど、環境省の対応は後手に回った。一方、懇談の場での職員の行為には「話している最中にマイクをいきなり切るなんて普通はしない」(環境省職員)など、省内からも疑問の声が上がっている。

 木内室長によると、懇談の場では参加団体に3分ずつの持ち時間があり、3分を過ぎた場合にマイクを切るという運用方針を事前に決めていた。当初は会場で周知する予定だったというが、木内室長は「(メモを)読み飛ばしてしまった」と話す。昨年度も同じ運用方針だったが、実際にマイクを切ることはなかった。【山口智】

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