大相撲春場所で新入幕力士として110年ぶりの優勝を果たした尊富士(25)=本名・石岡弥輝也=が1日、出身地・青森県五所川原市金木町などで行われた凱旋(がいせん)パレードに参加した。主催した市によると計約5万5000人が集まり、口々に「ありがとう」の声が上がった。【江沢雄志、松本信太郎】
青森市の県庁では宮下宗一郎知事から県褒賞を授与された。「県全体が応援しているのでこれからも活躍を期待している」と宮下知事が激励。尊富士は「誇らしい」と胸を張った。大相撲関係者の県褒賞は1990年に木造町(現つがる市)出身の師匠・伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)が受けて以来という。
地元の五所川原市役所を訪れると、一目見ようと集まった大勢の市民に拍手とともに出迎えられた。功績をたたえて新たに設けた市民栄誉賞を佐々木孝昌市長から授与された尊富士は「本当に光栄なこと。市民の皆さんのおかげでつかみ取った優勝。テレビで応援してくれる姿を見て千秋楽も土俵に立てた」と振り返り、同席した母桃子さんを前に「相撲を通じて恩返しできたかな」と話した。
市役所ロビーでは市民からのサインの求めに気さくに応じ、笑顔で市民とふれ合った。幼い男児の抱っこを頼まれて抱き上げると泣かれてしまう一幕も。カメラを手に尊富士の姿を撮影していた市内に住む工藤武さん(70)は「地元の誇り。けがをしっかり治して頑張ってほしい」と話していた。
金木地区で行われた五所川原市主催のパレードで、尊富士は親方とともにオープンカーに乗って登場。同郷の作家・太宰治の生家として知られる観光施設「斜陽館」の前を通ると、沿道は大勢の人であふれかえった。手作りうちわなどを持つファンも多く、祝勝ムード一色となった。
市金木総合支所前ではセレモニーが行われた。尊富士は「今ここに立てているのも皆さんのおかげ」と感謝するとともに「自分が金木を引っ張っていけたら」と故郷への思いを語った。また「これからが一番大事。また皆さんのいい笑顔が見られるように精いっぱい頑張る」と決意を新たにした。
つがる市から妻と訪れた葛西和男さん(74)は数十年にわたる相撲ファン。尊富士へのメッセージボードに感謝の言葉を書きながら「優勝した時には涙が止まらなかった。相撲王国青森の復活を期待している」と話した。
中学校の同級生だったという五所川原市の会社員、工藤真嗣さん(24)は「テレビで見ていると実感がなかったが、今日のパレードでこれだけのことを成し遂げたんだとようやく理解できた。ケガを治して、無理せずこれからも頑張ってほしい」と活躍に期待した。
尊富士は夏の東北屈指の山車祭り「立佞武多(ねぷた)」が行われる五所川原市中心部もパレードした。スタート地点では高さ20メートルを超える勇壮な立佞武多も登場し、快挙を祝した。
師匠の伊勢ケ浜親方は愛弟子について「番付はまだ下なので大関、横綱を目指してともに頑張っていきます」と力強くあいさつ。尊富士も「子どもたちの希望になれるよう、もっと強くなってまた帰ってきます」と話した。
沿道だけでなく建物の屋上や窓からも多くの人がオープンカーに声援を送った。青森市から家族連れで訪れた林田幸恵さん(32)は「子どもたちに一目見せたくて来ました。テレビで見てもかっこいいが、実物はより男前でした」と興奮気味だった。
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