静岡県藤枝市と地元企業、商店などが連携して進める旧市街地再生の取り組みに、人気ロックバンド「アジアン・カンフー・ジェネレーション」でボーカル、ギターを担当する後藤正文さん(47)が一肌脱ぐ。現在は使われていない土蔵を音楽スタジオにリノベーション。音楽活動支援の拠点づくりを目指す。
市内のコワーキングスペース「未来共創ラボ フジキチ」が主催する「フジキチ88(パチパチ)プロジェクト」の一環。88プロジェクトは2023年3月から月1回のペースで各回4人のゲストを招き、街の未来や課題解決に向けて「やってみたいこと」を提案してもらい、その実現を目指すというものだ。
後藤さんは、プロジェクトの特別編として4月27日に開かれた「フジキチ88プロジェクト 藤枝旧市街地トーク&ライブイベント」に登壇。発売から1分で完売したというチケットを入手した市民やファン135人の前で、同市藤枝1にある民間所有の土蔵を音楽スタジオにリノベーションする計画を明らかにした。
後藤さんは隣接する島田市の六合地区出身。経済的基盤のないミュージシャンが利用できるスタジオを作りたいと考え、約1年半前から適地を探していたという。県立島田高校の同級生が藤枝市役所で空き家対策を担当していた縁で、同市の町づくりの取り組みを知り、今回リノベーションする土蔵と出合った。
土蔵の建造時期は不明だが、かつては茶の貯蔵に利用されていたという。間口約4・5メートル、奥行き約7・2メートル。屋根の高さは約6・5メートル。天井が高いために音の跳ね返りが遅く、録音の際に反響音が入りにくいのが魅力だという。
今後は、音楽振興のためのNPO法人を立ち上げて寄付を募り、リノベーションを進める。土蔵のほか、近くのビルの空き階も所有者から後藤さんが利用を任されており、後藤さんは「ミュージシャンが合宿したり、仲間と音楽について語り合ったりできるような、コミュニティースペースを作りたい」と話す。スタジオには自身の録音機材を持ち込み、機材を扱える人材も育成。「ミュージシャンとのマッチングもしていければ」と語った。
周辺一帯は旧東海道藤枝宿や特産の茶業の集積地としての歴史を持ち、寺社など歴史的建造物や商店が並ぶ。市は民間の協力を得て、こうした旧市街地再生の取り組みを進めている。後藤さんは「町の雰囲気を大事にしながら、独自性のあることをしたい。スタジオが、音楽を始める人の希望になれたら」と力を込めた。【藤倉聡子】
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