茨城県つくば市の国立環境研究所は3日、研究所内に鳥インフルエンザウイルス検査を手掛けるベンチャー企業を設立したと発表した。国環研が開発した、迅速に検査できる技術を活用する。国環研発のベンチャーは初めてで、2025年1月6日に事業を始める。【信田真由美】
設立したのは「野生動物医科学ラボラトリー」。国環研職員で野生動物感染症の研究者、大沼学さんが社長を務める。従来の検査には10日ほどかかっていたが、国環研の技術を使えば1~3日で結果が出るという。迅速に検査ができれば、感染拡大を防げる可能性がある。
ウイルス感染を調べる場合は、わずかな量の検体からウイルスの有無を判別するため、専用の薬液を使って温度を上下させて遺伝子を増幅させる「PCR」という手法を用いることが多い。しかし、鳥の喉や尻から採取した検体では遺伝子が増えず、卵の中でウイルスを培養する必要があり、検査に時間がかかっていた。
大沼さんは2017年、手法の条件を見直し、遺伝子を増幅させる時の温度を従来の50~60度ではなく30度で試した。すると、遺伝子を増やすことができ、3日間でウイルスの遺伝子配列まで調べられるようになった。大沼さんは「たまたま30度でやってみたらうまくいった。最初は論文の審査員にも信じてもらえなかったほどだ」と振り返る。
さらに、23年にはウイルス特有の遺伝子配列を持っているかどうかを蛍光色素で判別できる技術を海外企業と開発。この手法なら1日でウイルスの有無が分かるという。
国環研はこれまで行政の依頼を受け野生動物の検査をしてきた。ベンチャーではペットショップなどでの飼育鳥や猫の検査を請け負うほか、東南アジアなど海外でも技術の活用を検討する。
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