「天空の秘境」と呼ばれる奈良県野迫川村の雲海。東京からおよそ6時間かかるこの村は、人口わずか300人あまりながら、外国人観光客が多く訪れています。
■「天空の秘境」奈良・野迫川村の魅力
奈良・野迫川村 この記事の写真奈良県南西部、標高1000メートルを超える紀伊山地の山々に囲まれた野迫川村。村の97%が山林で、村の標高は平均700メートルです。
東京からは新幹線と在来線、バスを乗り継ぎ、およそ6時間かかる「天空の秘境」です。住民はわずか327人。離島を除くと日本で最も人口が少ない村です。
野迫川村の魅力は駅もなければ、スーパーもなく、信号すらありません。そんな野迫川村の魅力を住民に聞いてみると、「いいところと言われても…。昔は何かあったかも分かりませんけどね」「魅力のあるところはありません。自信を持ってないと言えます」という答えが返ってきました。
一方、「最近はこの向こうに雲海がね、結構見られるところがあって、多くの方が朝早くからいらしてます」という声も聞かれました。
絶景スポット季節を問わず一年中雲海が発生しやすい野迫川村は、知る人ぞ知る雲海の名所です。しかも、村の中に7カ所ものビュースポットが点在する「雲海の村」です。
場所ごとに雲海の見え方は異なり、山あいを縫うように蛇行する雲の形が、伝説の生き物・青龍が天に昇るように見えると縁起を担ぐスポットです。
また、標高およそ1200メートルの山の上からは、紀伊半島に連なる山々と雲海のコラボを堪能できます。条件が整えば、満天の星空との奇跡のような光景も目の当たりにできます。
さらに、集落のすぐ横には驚くほど澄んだ清流が流れています。泳ぐ魚の姿はもちろん、川底に映る影までもはっきり見えるほどの透明度です。
また、弘法大師が修行をしたという立里荒神は、火の神を祀る日本三大荒神の一つです。本殿の屋根を突き抜ける杉の大木や、白木の鳥居が延々と並ぶ珍しい光景もあり、全国から参拝客が訪れます。
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■熊野古道「小辺路」を目指す外国人■熊野古道「小辺路」を目指す外国人
熊野古道の険しいルート「小辺路」そんな天空の秘境の山道を歩く外国人が、ここ数年で急増しています。大きなリュックを背負い、一人黙々と歩く女性の姿も見られます。
外国人の姿は他にも見られます。
イギリス人「イギリスです。ロンドンの近くから来ました」
「高野山から熊野本宮まで4日ぐらい歩きます。熊野古道の小辺路(こへち)を歩きます」 熊野古道のハイキング
彼らの目的は、世界遺産に登録されている熊野古道のハイキングです。高野山と隣接する野迫川村には、高野山と熊野本宮を最短で結ぶ「小辺路」と呼ばれる、全長およそ70キロのルートが縦断しています。
この小辺路は標高1000メートル級の峠を三度越えなければならず、複数ある熊野古道の中で最も険しいルートです。
中国人観光客「友達から聞いたり、日本のウェブサイトを見たりして小辺路を知りました」
女性は紅葉の時期に合わせ、このルートを選んだといいます。
中国人観光客「とても美しいです。友達にもぜひ来てほしいと思います」
ポーランド人とイギリス人のカップルは、4日前に熊野本宮をスタート。この日の夕方には高野山に到着する予定だといいます。
ポーランド人観光客「人があまりいない、あまり有名じゃないルートを歩きたかったんです。中辺路(なかへち)も候補に上がりましたが、田舎の村を歩きたいのでこの道にしました。一日に会う人が5人ぐらいで、とても少なくて良かった。村の人も歓迎してくれたし、絶対に来る価値があると思います」
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■「雲海スポット」世界中から訪れる見物客■「雲海スポット」世界中から訪れる見物客
「天空の秘境」夕方、小辺路のルート近くにある宿には続々と外国人がやってきます。
フランスからの家族「熊野古道を全部じゃないけど、10キロぐらい歩く予定です。日本各地を周る中で日本を発見したいと思ったんです」 シンガポールからの家族
「家族で日本の秘境を訪れたいと思ってきました。面白い場所だと思ったんですよ」 かわらび荘 中迫静子さん
「以前は外国人に戸惑った」というかわらび荘の中迫静子さん(90)も、今ではすっかり当たり前の光景だといいます。
中迫さん「遠いところから来てくれてうれしいよ。エストニアからでももう10人、15人も(団体で)もう5回来た。ドイツやアメリカやイギリスって言ったら、もう身近に感じるわ」 大阪からの観光客
「めっちゃキレイやん。やばい。これは癒やされるな」
「天空の秘境」の新たな魅力・雲海。朝日を浴び、黄金色に輝く雲が谷を覆い、山の稜線がまるで島のように浮かび上がります。その絶景をひと目見ようと、雲海スポットには早朝から大勢の見物客が集まります。
大阪からの観光客「1年中キレイな雲海が見られるので、来たんですけど。(大阪を午前)2時です。2時出発で来ました」 京都からの観光客
「きょうで3回目です。2回目来た時はだいぶしっかりした雲海だったんで。結構、雲の形が変わるから、何回来ても面白いと思います」
雲海スポットで野宿をしていたドイツからの観光客は「とてもラッキーでハッピーでした」「写真を120枚も撮ったよ」と話しました。
いなか食堂別所そんな雲海スポットのにぎわいに、いなか食堂別所では早朝から訪れる見物客をもてなそうと、午前7時ごろから店を開けるようになったといいます。
いなか食堂別所 別所師子さん(77)「雲海見てきた?」 京都からの観光客
「きょうは(雲海)出なかったですけど、その帰りです」 別所さん
「やっぱり雲海の人が多いですね」 京都からの観光客
「(自転車で)走ってて偶然見つけて、温かいです。染みるな。おいしい」
最近では、海外からの客も来るようになったといいます。
別所さん「(外国人観光客)チョコチョコ寄ってくれます。ノート作っていますけど、野迫川に来たら書いといてねと。よく来てくれると思うわ。本当に感謝です」
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■野迫川村の雲海に魅了された宿の代表■野迫川村の雲海に魅了された宿の代表
SNSで拡散そんな野迫川村の雲海にほれ込み、秘境で宿を営む女性がいます。
「雲海の里の宿」代表・泉本勝代さん(60)は、10年ほど前に初めて見た野迫川村の雲海に一目ぼれ。6年前、雲海見物の拠点にしようと宿を開業しました。
泉本さん「すごいでしょ、これ。これが一回目ですよ。ドハマりもドハマり」
泉本さんの雲海愛あふれるSNSでの情報発信や、野迫川村の雲海の画像が徐々に拡散されました。
さらに、英語対応の宿泊予約サイトにも掲載されたことで、交通の便が悪いにもかかわらず、外国人観光客からの予約が入るようになりました。
宿のノートには外国語予約状況を書いたホワイトボードには、海外の国名がズラリと並びます。
泉本さん「(日本人は)月に2人ぐらいかな。(年間)80%ぐらいが海外の人ですね」
外国人がこの宿に泊まる理由は様々です。
泉本さん「民家に泊まりたかったという人もいるし、高野山と熊野や吉野に行く途中で泊まる人もいるし、雲海目当ての海外の人もいる」
最近は、雲海を目当てにした海外からの宿泊客が増えてきたといいます。
泉本さん「この子がドバイ(UAE)の子なんです。雲海目当てで日本を旅してた子です。この子らも雲海(目当て)で来ました。オランダの子ら。本当にびっくりしてました。本当に海みたいですね」
この日、宿泊したのはイギリスから来た夫婦です。
イギリスから来た夫婦「あす渓谷の雲海を見る予定よ」
「(Q.雲海は見たことある?)イギリスでは見たことない」 天使のはしご
この日は前日に雨が降り、湿度が高く、雲海が発生するには好条件。期待が膨らみます。
イギリスから来た夫婦「これまでこんな光景を見たことがないわ。あす見られることを願っています」
「(Q.雲海見られるでしょうか?)分からないわ。少し曇っているわね…」
早朝午前6時すぎ、宿を出発し、およそ10分で青龍雲海が見られるポイント・天狗木(てんぐき)峠に到着しました。
泉本さん「あー残念。アイム・ソーリー・ナッシング」
夜の冷え込みが足りなかったのか、全く雲海は現れませんでした。
イギリスから来た夫婦「残念だけど、天気はコントロールできないからね」
しかし、移動した別のポイントで、絶景が広がりました。姿を見せたのは、雲の切れ間から柱のように地上に降り注ぐ光線。通称「天使のはしご」と呼ばれる現象です。天から一直線に伸びた光が山肌を照らし、神々しい光景が広がりました。
泉本さん「よかった!(自然は)何か見せてくれますよね」 水墨画のよう
別の日、ハネムーンで日本を訪れていたドイツからの夫婦がいました。野迫川村での3日間の滞在の締めくくりに、雲海見物に行くといいます。しかし翌朝、空気が乾燥し、雲海はあまり期待できない状況です。
ドイツから来た夫婦「(Q.朝早いけど大丈夫?)早いけどコーヒー飲んだから準備できている」 泉本さん
「行きましょう、レッツゴー!」
ポイントに到着すると、手前にある山並みに薄い雲海がかかり、奥には濃い雲海がかかる、まるで水墨画のような光景が広がっていました。
ドイツで写真家として活動する夫のアルネさんはカメラマン魂に火がつき、シャッターを押す手が止まりません。
泉本さん「ユー・アー・ラッキーカップル」
「出たね、よかった。ほっとした。(雲海が)あっちだけすごくたまってるでしょ。手前は薄いでしょ。レアですよこの雲海。いつもとちょっと違います。あまり見たことない。レアレア」
山影から朝日が顔を出すと、雲海は黄金色に染まり神々しさを増します。アルネさんもカメラを下ろし、その光景に見入ります。
ドイツから来た夫婦「ここは本当に特別です」
「特別だね」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年12月3日放送分より)
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