「ゼビウス」「スーパーハングオン」など30~40年前のアーケードゲーム機をそろえ、全国からファンが足を運んだ青森県十和田市の「レトロゲーム秘密基地」が2月に火災で焼失した。再起を図る店主の鳥居秀憲さん(52)がクラウドファンディング(CF)を呼び掛けたところ、4月20日の開始からわずか5日で目標額の1000万円に到達。「支援いただいたみなさんに感謝の言葉しかない」と前を向き始めた。
店の歴史
鳥居さんは十和田市の南隣にある五戸町出身。高校卒業後に上京してシステムエンジニアとして働いていたが、2010年に古里に近い十和田市へUターンした。
実家ではかつて祖母が駄菓子屋を営み、1980年代のテーブル型ゲーム機などが店内に置かれていた。幼いころからゲーム機を目にして育ったこともあり、「少年時代を思い出し、人が集まる場所を作りたくなった」と14年ごろからレトロゲームを集め始めた。
ゲーム機は国内外のオークションに参加したり、リサイクルショップを回ったりして入手した。ゲーム機の基板や機体を購入しても画面が映らず、起動しないケースも多い。持ち前の技術で修理に取り組み、部品も集め、2年近くかけて直したゲーム機もあった。念願がかない、19年4月、十和田市内に開店した。
コロナ禍を越えた矢先に…
店内には80~90年代のテーブル型ゲーム機や、バイクの運転を体感できるゲーム機が並んだ。主なタイトルは、エンデューロレーサー▽アフターバーナー▽アウトラン▽ストリートファイターⅡ▽ファイナルファイト▽スターフォースなど。駄菓子も販売するなどレトロな雰囲気も評判を呼び、全国から客が訪れるようになった。
新型コロナウイルス禍の影響で21年5月にいったん閉店。500メートルほど離れた商店街の一角に20年以上放置されていた建物を1年半かけて自力で修繕し、22年12月に新店舗をオープンさせた。
だが今年2月24日、近隣で発生した火災が店舗に延焼。稼働していた30台のゲーム機をはじめ、保管していたゲーム機の基板、約120タイトルなどをほぼ焼失した。建物の住居スペースにいた鳥居さんは火災に気づいて避難したが、ゲーム機や建物が燃えていくのを眺めることしかできなかった。
火災の様子や失意の底にいた自身の思いをX(ツイッター)で発信すると、「応援します」「諦めないで頑張ってください」など、全国から数多くの励ましのメッセージが寄せられた。
今後はゲーム基板を再び収集しなければならず、再起への道はまだ遠い。それでも鳥居さんは「自分1人だったら立ち直れなかった。3年以内には再建させたい。気心知れたお客さんや家族連れがほっとできる空間を再び作りたい」と話している。CFは5月30日まで受け付けている。【松本信太郎】
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