今年のノーベル化学賞を受賞する英グーグル・ディープマインド社のデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)が21日、東京都内で報道各社のインタビューに応じた。受賞を受け「AI(人工知能)は正当な科学だと認められた。AIは創薬や環境問題の解決などほぼ全ての分野で活用できる」と展望を語った。
囲碁のトップ棋士を破る「アルファ碁」の開発者として知られるハサビス氏は2018年、アミノ酸配列から複雑なたんぱく質の立体構造を高精度で予測するAI「アルファフォールド」を発表。生物学の基礎研究や薬品開発などに活用されている。慶応医学賞の授賞式に合わせて来日した。
ハサビス氏は、AI研究に30年以上取り組んできた理由を「人間の知識を広げたいと常に考えていた。AIはさらなる発見を手助けしてくれる究極の手段だ」と説明。AIをたんぱく質の構造予測に使うアイデアは1990年代から抱いていたと明らかにした。
次の目標として、創薬▽新材料の開発▽未解明の数学の命題の解明▽気候変動問題――などにAIの活用先を広げていく考えを示したハサビス氏は、将来、AI自身がノーベル賞級の発見をする可能性があるか問われ、「今のAIは科学者の立てた仮説の検証を手助けするツールだが、おそらく10年後にはAI自身が仮説を立てられるようになるだろう」と予測した。
ハサビス氏は23年、世界の名だたるAI研究者らがAIには核戦争や感染症パンデミックなどと同等の「(人類)絶滅のリスク」があると警鐘を鳴らした声明に名を連ねた。「悪い人物が有害な目的でAIを使うリスクはある。そうした人物をシステムにアクセスできなくさせる仕組みが必要だ」と語った。【信田真由美】
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