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 日々発達するAI技術。これが家事や育児などの家庭内労働、いわゆる“無償労働”の負担を将来的に減らせるかもしれないという研究結果が出た。

【映像】10年後、最もラクになる家事とは?

 この研究を行ったのは、お茶の水女子大学の永瀬伸子教授の研究グループだ。

「AI×家事」の研究はほぼなし

「『AIと働き方の未来』や『コンピュータと仕事の変化』については多くの研究があるが、無償労働、つまり家事や介護や育児がどう変わっていくかについては、ほとんど研究されていないのではと考えた」(永瀬教授、以下同)

 永瀬教授の研究グループはイギリスのオックスフォード大学の研究グループとの共同研究を行い、日英の理工学者やエンジニアなどAIに関わる65人の男女に、17種類の家庭内労働がAIで代替可能かを回答してもらい、アンケート結果を細かく分析した。

「食料品などの買い物」は5割以上短縮できる?

 例えば、料理には献立を考える、冷蔵庫の中を見るなど様々な手順があるが、「10年後にどのくらい技術的に時間短縮できるか」を専門家に回答してもらったという。

 結果として、最も自動化されると予測されたのは「食料品などの買い物」で、10年後には5割以上時間短縮できると予測。また、掃除や洗濯などの基本的な家事も高い割合で時間短縮できると予測され、17種類を平均すると10年後に家事などの無償労働は4割もの時間が短縮されるという。

 興味深いことに、この研究ではAI開発者らの男女差も分析された。最も自動化が進むと回答したのはイギリス人の男性専門家で、日本人男性の企業エンジニアは自動化が進むという予測が最も低かった。

「イギリスの男性は54%が『料理をする』と回答しているが、日本は15%。イギリスの方が日常的に男性も家事に関わっており、家事への理解も深い。そのため、家事の自動化について想像しやすいのかもしれない」

 永瀬教授の事前調査では、聞き取りをした大企業のエンジニア系の日本人男性は家事育児を配偶者に任せているためか、無償労働の自動化への関心が薄かったという。これにより、AI技術で家事の負担を解消しようという考えに至らず、技術発展に繋がりにくい可能性がある。

「もう一つの可能性として、日本のAI技術がイギリスよりも遅れていることが挙げられる。特に、すぐに事業にするという俊敏性やビッグデータの活用、デジタル技術スキルの面で遅れている。これが技術的な予測に差が出た原因の一つかもしれない」

 AI技術で家庭内労働の負担が減らせるかもしれないという研究結果を踏まえ、永瀬教授は固定した男女の役割分担の解消や新たな家電製品の開発が進むことを望んでいる。

「家事が簡単になり、ボタン一つでできるようになれば、女性の負担が緩和される。また、男性がもっと家事に参加するような製品開発が進むことを期待する」

自動化を阻むのは「人間の感情」?

「AI×家事」の未来について山田進太郎D&I財団 COOの石倉秀明氏は「4割どころか、家事はほぼ100%自動化できるという領域まで進むかもしれない」としつつ「自動化を阻むとしたら人間の感情だろう」と予測した。

「既に一部のレストランなどでは“ロボシェフ”の手によってチャーハンや寿司などが自動で作られており、その“家庭版”が普及するだろう。その時に『手間暇かけて手作りすべき』などという昔からの謎の価値観が邪魔をするかもしれない。もしこの点について一緒に住むパートナーと価値観の違いが生まれた時は地獄だ」

 さらに石倉氏は「習い事の送迎はロボタクシーに頼むなど、育児についても自動化が進むだろう」としつつ、「AIによる家事の省力化はジェンダーギャップの解消にもつながるだろう」と指摘した。

「共に住むパートナーがいた時、どちらかが仕事をとり、残された片方が家庭のことをやる、という場面がある。この時、男性が仕事をとって、女性が家庭のことをやる構図が世界的にも多い。その“差”が昇進や賃金格差につながっている、と示した研究もあるが、もし家事・育児の多くが自動化されたらジェンダーギャップの解消にもつながるかもしれない」
(『ABEMAヒルズ』より)

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