「自分に負けんな」「一歩ずつ確実に前進」――。少年院で更生を目指す少年らの、自分を鼓舞する言葉をつづった「俺たちの日めくりカレンダー」の製作が進んでいる。非行少年らの立ち直りを支援するNPOが企画し、製作費約60万円を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。製作目標は500部。「多くの人に力を貸してほしい」と寄付を呼び掛けている。
12日午後、愛知県豊田市の「愛知少年院」の一室で、17~20歳の在院者ら8人が紙とペンを前にし、カレンダーに記す言葉を考えていた。企画したNPO法人「再非行防止サポートセンター愛知」(名古屋市守山区)の高坂朝人理事長は、自身の非行経験に触れながら「少年院での生活はいまの礎。1日1日を大切に向き合ってほしい」と呼び掛けた。
カレンダーには、愛知少年院、瀬戸少年院(同県瀬戸市)の在院者と、NPOが携わった出院者計31人が、未来の自分や少年院にいた頃の自分に向けて書いたメッセージが掲載される。CFの返礼品のほか、製作に協力した在院者や、両少年院に届ける予定だ。
「あなたにとって大切なモノは何も失わないようにしなさい」
ある少年は、家族に宛てた手紙の一節を選び、丁寧な字で書き込んだ。非行後、恋人も友人も離れていった。2度目の少年院。入院の少し前には、一番の理解者だった父を亡くした。この言葉を選んだ理由を「これ以上、失いたくない。周りの人にもなくしてほしくないから」と語る。
製作の様子を見守っていた高坂さんは「彼らは人生を良くしていく言葉を既に持っている。他の在院者や出院者の言葉にも触れながら、自分と向きあってほしい」と話す。
カレンダーを通して、高坂さんらが伝えたかったのはそれだけではない。非行を反省し、少年院で更生しようともがき、奮闘する少年らの姿を社会に知ってもらいたいという思いもある。
少年院を出院した少年らは、社会で生活していく中で差別や偏見などで就職先が見つからなかったり、せっかく仕事に就いても続けられなくなったりするケースも多い。家庭環境が複雑で居場所がないなど、さまざまなハードルが立ちはだかるという。
だからこそ、CFで寄付を募り、さまざまな人を巻き込みたかったという。「少年院の生活を知ってもらい、彼らの言葉に触れてもらうことで、再非行や再犯が減る社会につながれば」。高坂さんはそう願っている。
CFはプラットフォーム「CAMPFIRE」から「俺たちの日めくりカレンダー」で検索。【田中理知】
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