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 電動キックボードを街で見かける機会が増えた。タクシーに代わる近距離として注目されている一方で、飲酒運転や信号無視など、交通違反の増加によって問題視もされている。なかでも、やり玉に挙げられるのが「LUUP」だ。

【映像】電動キックボード、走っていいのはどこ?

 2020年のサービス開始時から、台数は50台から2万台以上に、ポート数は約50カ所から1万カ所以上になった。東京・大阪・横浜など全国10都市を中心に展開し、アプリダウンロード数は300万以上。ライド基本料金は50円で、1分あたり15円の時間料金がかかる。

 株式会社Luupは先月、監査役に元警視総監を迎えると発表し、乗り方やルールの周知を徹底しているが、批判の声はやまない。ネット上では「日本では既得権益があり、新規事業が難しい」との指摘もある。『ABEMA Prime』では、日本独特の空気感の中で、ユニコーン企業が生まれるにはどうすれば良いか考えた。

■わずか4年で50台→2万台以上 急激に増えるLUUP利用者

 LUUPは安全の取り組みを強化している。監査役に元警視総監・樋口建史氏が就任し、代表の岡井大輝氏は「新しい経営体制の下で、安全・安心に対する取り組みをさらに強化し、利用者のみならず歩行者や自動車を運転される方など、LUUPのある街に暮らす、皆さまの安全・安心を第一に、事業を運営してまいります」とコメントした。

 また6月には「安全・安心アクションプラン2024」を発表した。交通違反点数制度を導入し、悪質ケースはアカウント凍結も行う。また、安全走行サポート「ナビ機能」の試験運用を開始し、走行しやすいルート(車道のみ)の提案などを始めた。

 LUUPの安全対策には、X上で批判の声が出ている。「広告ではヘルメットかぶってるけど、実際にかぶって乗ってる人見たことない」「いまさらヘルメット着用推奨っていうけど、そもそもなしで乗れるようにロビイングしてたじゃん」「元警視総監がLUUP入りとか、ほんとズブズブじゃん」「わざわざ点数制導入するぐらいなら既存の交通制度に準拠すればよかったのでは?」といったものだ。

 エンジェル投資家のブランドン・K・ヒル氏が、在住している米サンフランシスコの事情を紹介する。「LUUPのようなシェアリングeスクーターが普及している。会社にも2台買って、スタッフが自由に使えるようにした。スタッフによっては通勤にも使っている。サンフランシスコは自転車レーンが完備されていて、ある程度安全に乗れる」。

 作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「事故や違反があるのは確かだが、だからと言って『完璧に安全運行できるまで導入をやめよう』と言った瞬間に、何もできなくなる」と指摘する。「現状いろいろ問題はあるが、そこから『専用道路を広げよう』のように改善していけばいい」と提案する。

■新しいものにすぐ批判…日本の空気感

 すでにサンフランシスコでは、自動運転タクシーが走っている。ブランドン氏は「約2年前に実証実験をふくめて、2社が公道で走り始めた。1社は1年弱前に事故を起こして業務停止処分中だが、また復活するらしい」と現地の様子を語る。

 こうした状況を踏まえ、「トライアンドエラーの繰り返しで、イノベーションは発達する。自動車も飛行機も100%の安全はない。日本には技術があるが、それを世の中に出す勇気とリスクテイキングが少ない」との見解を示す。

 佐々木氏は“キャズム理論”を引き合いに出し、「日本のみならず、新しいものが出ると、何でも否定したがる人は一定数いる」と話す。また、安倍晋三元首相の回顧録を読んで、「『日本人は新しいものはすぐ反対するが、社会に普及してルールになると、案外すんなり受け入れる』とあった。そういう民族性だと、LUUPも全国で使えるようになれば、『まだ使ってないの?』となる」と予想した。

 ブランドン氏は、日本独自の「新規参入の難易度」に触れる。「200年以上続く世界の企業のうち、65%ぐらいが日本企業。日本は大企業が長年続くが、アメリカは大企業でも15年以内に半数以上がなくなる。新しいスタートアップが入り、破壊的なイノベーションが起こる」。

 具体例として「Netflixが出てきてビデオレンタルが、Amazonが出てきて米国トップの書店がつぶれた」と挙げる。「当たり前に新陳代謝が行われているが、日本では既存企業が強すぎて、ライドシェアやAirbnb、自動運転が入りにくい現状がある」という。

■ユニコーン企業が生まれるために必要な雰囲気とは

 こうした日本の風土から、ユニコーン企業は誕生するのか。「そもそも国内向けだけなら、ユニコーンになるのは難しい。LUUPに似た、アメリカの“Lime”が日本進出を始めている。日本でも新しいことをガンガンやらないと、アメリカの膨大な資本力とチーム力で実現して、いつの間にか黒船にやられてしまう」と、ブランドン氏は警鐘を鳴らす。

 佐々木氏が「国産スタートアップつぶし」の歴史を振り返る。「インターネットビジネスの初期から、過去20年くらい続いている。国産動画サービスが、出版やテレビ業界から『著作権はどうした』と言われているところに、YouTubeがやってきた。SNSもmixiのような国産サービスから、FacebookやXへ移っていった。日本企業は黒船に弱い」。

 新たな挑戦に対して、「アメリカでは『面白いね』『手伝うよ』とポジティブに受け止められる」と、ブランドン氏は語る。「Netflixが多額の予算で高クオリティーのものを作ると、日本のテレビ局のコンテンツがしょぼくなる。局の売り上げは減り、社員は給料が減るか、職を失う。日本企業は待遇が悪くなる可能性がある」。歌舞伎町ゲイバー「CRAZE」店員のカマたく氏は「なぜ黒船は批判しないのに、日本企業には批判するのか。たたかれたときの“気にしすぎ”もすごい」と疑問を持つ。

 ブランドン氏は「日本人は“ずるさ”を批判するが、アメリカでは“どれだけずるくできるか”が勝負だ」と違いを説明する。「自分にしかできない、ずるさのアドバンテージで戦う。日本では、出し抜いた人間を周囲が一斉にたたく。アメリカでは、“たたく”より、“ほめる”ことが多い。同じことをやっても、環境によって反応が違う。自分もアメリカに移住して、モチベーションの高まりを体験した」。
(『ABEMA Prime』より)

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