米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)を拠点とする米空軍第18航空団のニコラス・エバンス司令官(准将)は26日、5月末ごろに同基地で6カ月連続となるパラシュート降下訓練を実施すると明らかにした。
日米両政府は降下訓練について、沖縄県伊江村の米軍伊江島補助飛行場で実施することで合意し、市街地に囲まれた嘉手納基地での訓練は「例外的な場合に限る」としている。しかし、米軍は2023年12月以降、伊江島補助飛行場の滑走路の劣化を理由に、毎月、嘉手納で訓練を実施。県や周辺自治体は「実質的な常態化だ」と反発を強めている。
エバンス司令官は嘉手納基地を住民に開放する27日のイベントの事前説明のため、嘉手納基地内で記者団の取材に応じた。
降下訓練について「地元で懸念があることは認識している。ただし、訓練している特殊作戦部隊の隊員は米軍で最も経験豊富な方で、目標地点に安全に着地している。物資の降下訓練はしない」などとして、伊江島補助飛行場の改修が終わるまで嘉手納で訓練を続ける考えを示した。次の訓練について「5月の終わりごろに実施する」とし、「隊員は練度を保つため、月に4~6回の降下訓練をしている。国外でも訓練しているが、嘉手納でしかできない訓練もある」と理解を求めた。
降下訓練はかつて沖縄本島中部の読谷補助飛行場(06年に全面返還)で実施していたが、基地外に落下する事故が相次いだため、日米両政府は1996年に合意した日米特別行動委員会(SACO)最終報告に基づき、訓練場所を伊江島補助飛行場に移転した。
しかし、その後も嘉手納基地で訓練は繰り返され、日米両政府は07年に嘉手納での訓練は「例外的な場合に限る」と新たに合意。「例外」の要件として▽定期的でない▽小規模▽喫緊の必要がある▽悪天候などの制約で伊江島補助飛行場で訓練できない――の4項目を確認した。
防衛省によると、米軍は23年12月以降、嘉手納で毎月訓練を実施している理由について、伊江島補助飛行場の滑走路が劣化し、改修するまで訓練隊員を乗せる大型機の安全な離着陸ができないためと説明。木原稔防衛相も「例外的な場合に該当する」として追認している。
これに対し、嘉手納基地を抱える嘉手納町と北谷(ちゃたん)町、沖縄市の各首長と各議長は4月25日、連名で「立て続けの実施はもはや例外的とは言えず、実質的な常態化である」として、実施しないよう求める抗議文をエバンス司令官などに発送した。
県も繰り返し抗議しており、玉城デニー知事は26日の定例記者会見で「常態化させようとしていると疑わざるを得ない。伊江島補助飛行場が整備されるまでは、国外、県外で実施するべきだ」と述べ、今後改めて日米両政府に抗議の申し入れをする考えを示した。【比嘉洋】
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