自民党の派閥パーティー収入不記載事件を受けた政治資金規正法改正の各党の案が出そろった。大型連休明け以降、議論が本格化するが、最大の焦点といえるのが、会計責任者が刑事責任を問われた場合に国会議員も責任を問われる「連座制」だ。各党とも導入の方向性を示しているが、再発防止のためには「別の視点も必要」とする専門家の声もある。

事件では安倍派(清和政策研究会)を中心に100人近くの議員の関連団体の不記載が発覚。規正法の在り方が問われ衆参が政治改革特別委員会を設置し、政府は今国会の改正を目指している。

立憲民主党などは、議員の起訴が3人にとどまったことを念頭に、選挙運動責任者などが刑事責任を問われれば議員も失職する公選法の規定と同様、会計責任者が責任を問われれば議員が失職する連座制を規正法にも設けるよう主張している。

自民党では、会計責任者がわざと不記載にしただけで議員が失職しては「政治機能がまひする」などの慎重論もあったが、条件付きで連座制の導入を盛り込んでいる。

そもそも、公選法に連座制の規定があるのは、違反者が議員本人でなくとも、議員を選出する前提である「選挙の公正」をゆがめるものだからだ。一方、規正法が罰する政治資金収支報告書の不記載は、議員活動に関係はあっても、議員選出の前提とまでいえるかは、議論の余地が残る。

元検事の高井康行弁護士は連座制について「会計責任者が恣意的に違反しても議員が失職する可能性があり、民意の軽視につながる」と安易な導入に警鐘を鳴らした上で罰則の強化を提言する。

具体的には、禁錮5年以下もしくは100万円以下の罰金としている規正法の不記載罪や虚偽記入罪を、業務上横領罪と同じ10年以下の懲役とする「政治資金隠匿罪」とするほか、会計責任者の選任・監督で「相当の注意」を怠った場合、議員に50万円以下の罰金を科すとしている規定も強化すれば「抑止効果は向上する」とみる。

また、各党案では企業・団体献金の存続についても意見が分かれており、献金の在り方についても議論が進みそうだ。

もうひとつの焦点「政策活動費」 受領は報告義務も

自民党の派閥パーティー収入不記載事件に端を発し、各党の主張にばらつきがあるのが、党から議員個人に支出される「政策活動費」だ。具体的な使途を報告する義務がない資金ともいわれるが、場合によっては報告義務が生じることも。自民党が見直しに慎重な一方、立憲民主党は禁止を掲げており、国会で改めて検証されそうだ。

令和4年分の自民党本部の政治資金収支報告書によると、自民は幹部15人に計14億1630万円を支給。うち9億7150万円が、茂木敏充幹事長に対する支出だった。

政治資金規正法は議員個人への寄付を禁じ、政治資金管理団体に一本化するよう求めているが、例外として政党から議員個人への支出を認めている。これが政策活動費で、資金管理団体と違い、議員個人が収支報告書に報告する義務がない。

ただ、規正法に詳しい日本大の岩井奉信名誉教授によると、党から政策活動費を受け取った幹事長などの党幹部が、さらに個別の議員などに寄付した場合は、党からの直接寄付ではなく党幹部から議員への寄付になるため「受け取った議員側の政治資金収支報告書や、選挙運動費用収支報告書に記載する必要が出てくる」という。

仮に政策活動費が党幹部を経て議員個人にわたっていたと疑われても、現金のやり取りを裏付けるのは容易ではなく、法律違反に問われた例はないとされるが、岩井教授は「政策活動費のその後の使い道までが、無条件で不記載で済むわけではない」と強調。「政策活動費の本来の性質を踏まえた上で議論する必要がある」と、くぎを刺した。(久原昂也、星直人)

政治資金管理も党主導に 京都大教授(政治学)待鳥聡史氏

待鳥聡史・京都大教授(本人提供)

平成以降の政治改革では官邸主導の強化と与党の集権化がセットで進んだ。政治資金に関しても、国から政党に資金を交付する政党交付金の制度が導入されたが、個々の議員や政治資金管理団体が収入と支出を管理する仕組みは残った。

政治資金の支出は、個々の議員が雇用する秘書の給与や事務所の費用、情報収集などのための会食もすべて自身の政治資金管理団体の支出として記載されている。だが、こうした支出は政党としても必要なもので政党から支出していいはずだ。

収入については、特に自民党などでは政治活動の資金を自身で獲得する必要性が強いとされ、それが地盤を継承していない議員がリスクのある資金に手を出す原因になっている。政党交付金は本来、このような資金をカバーするはずのものだ。

今後は政党が当選前から候補者の生活を保障するなどした上で、政治資金管理についても党主導を強めていくべきだろう。それは平成期の政治改革以降の方向性にも合致し、政党ガバナンスの合理化にもつながる。(聞き手 荒船清太)

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