「絶対育休なんか取るなよ」との発言など、職員に対する数々のハラスメントが明らかになった愛知県東郷町の井俣憲治町長(57)は25日、町議会全員協議会で辞職を表明した。辞職願を24日に議長へ提出しており、公職選挙法の規定で、議長が町選挙管理委員会に通知してから50日以内に出直し町長選が行われる。
井俣町長や町役場に25日、町長殺害を予告する電話やメールなどが5件あり、不審な荷物も届いたことから、県警が庁舎内外を警戒する中で協議会は開かれた。
井俣町長は「職員に心よりおわび申し上げる」と陳謝し、「町が発展するため、町民の幸せを作るため、信頼される町になるため、議会と行政が手を取りながら進んでいく支障にならないよう、一住民、一町民として応援できる立場になれれば」と語った。さらに「今回の事案を私の辞職で終わらせることなく、大きな課題として共有し、いい町にしていただけるよう期待する」と述べた。
その後開いた記者会見で井俣町長は、2023年11月に職員へのハラスメントが発覚した後、民間3社、公的機関4、5カ所のハラスメント講習を受けたと説明。講習内容を踏まえ「ハラスメントに関する知識のなさが多くの職員、国民、町民に不快な思いをさせたことについて反省している」と述べた。
その一方で、町の第三者委員会が23日の記者会見で「町長のハラスメントが大きな原因で降格になった職員がいたと考えている」と指摘したことに対し、「そういう事実は全くない」と反論。第三者委が提出した調査報告書に対し「思うところもあるが」と不満を口にする場面もあった。
また、ハラスメント防止条例案について自身で検討してきたと明かした際には「ハラスメントという言葉の乱用をどう防ぐか。いたずらに使うことを抑止する必要もあると思っている」と主張するなど、加害者側とは思えない発言が相次いだ。
井俣氏は証券会社員などを経て07年から3期、町議を務めた後、18年5月の町長選で初当選し、現在2期目。
町議会では23年11月、町長に対する不信任決議案が提出されたが、必要な4分の3の賛成に届かず否決された。町はこの問題を調査する第三者委員会を設置。井俣町長は第三者委の調査結果を待って進退を含めて判断すると表明していた。
第三者委は今月22日、パワハラやセクハラ、マタハラなどさまざまな類型のハラスメントが、井俣町長が就任した18年5月以来、繰り返されたと認定する調査報告書を町に提出した。全職員を対象に第三者委が実施したアンケートで、回答した582人のうち108人が「自分自身が町長からハラスメントを受けた」と回答した。【荒川基従】
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