元受刑者の更生を支援する企業がある。犯罪歴を抱える人を雇用して、社会復帰を支援する「協力雇用主」。その一つが、建設会社の大伸ワークサポートだ。
【映像】刑務所内の最新情報を語る野口さん(実際の映像)
元暴力団員の野口さん(53)は「最初は覚醒剤で23歳。また30歳で覚醒剤」と、11回の服役経験を振り返る。38歳の時に、所属していた暴力団が解散した。今回は窃盗の罪で2年5カ月服役し、仮釈放された。
金さん(55)も、元暴力団員だ。傷害などで3回服役し、今回は横領で2年間の服役を経て、出所した。同じ日に出所した2人を出迎えたのは、大伸ワークサポートの廣瀬伸恵社長だ。2人は受刑者専用の求人誌を見て応募した。
廣瀬社長自身も、元受刑者だ。かつてはレディース総長で、覚醒剤の売買で22歳から5年服役。29歳で再び覚醒剤の売買を行い服役し、獄中出産を経験した。出所後も我が子と暮らすことはできず、真面目に生きるために、建設業界の門をたたいた。
刑務所に再入所した人のうち、約7割が無職だ。令和4年度の犯罪白書によると、再犯者率は47.9%と高い。そんな社会復帰に悩む元受刑者を、廣瀬社長は支えている。
従業員が住む部屋には、冷蔵庫やエアコンも完備されている。金さんは「俺らみたいな人間に、こんな場を与えてくれるって、最高にありがたい」と感謝する。「住むところは本当ならなく、また悪さしちゃう。刑務所には衣食住がある。人間の最低条件を満たしてくれるのはありがたい」。
大伸ワークサポートは、解体・土木工事がメインで、創業13年目だ。社員約40人の約8割が元受刑者で、更生して真面目に働く人がいる一方で、会社から逃げ出す社員や、家の壁や玄関などを破壊する元社員もいて、一筋縄ではいかない現実もある。
金さんと野口さんが、職場に仲間入りした。みんなで食卓を囲みながら、「こんな家庭的なところ、人生でない」と、しみじみ語る。元受刑者同士で、刑務所の最新情報で盛り上がる場面も。「刑務所は“さん付け”になった。気持ち悪いは気持ち悪い」。
どうすれば、再犯したくないと感じるのか。金さんは「懲役はたいして苦じゃない。それが俺らの人生。別に身寄りもない」と語る。野口さんもまた、「親もいなくなって、頼る人もいない。親戚も相手してくれない」と身の上話をする。
出所から1カ月たった9月20日、2人にとって初の給料日がやってきた。暴力団排除条例などによって、元受刑者には銀行口座が作れない人もいるため、現金で支給される。その場で、廣瀬社長は「野口さんが飛んだ」と明かす。目の届くプレハブから、社宅へ移った矢先だった。
荷物は全て置いたままで、仮釈放の決定書も置いたまま。失踪したのは、仮釈放期間を終え、刑期終了を迎えた翌日で、廣瀬社長は「仮釈放中に身元引受人の所から失踪すると、仮釈放が取り消され、また刑務所へ戻らなければならない。満期が来るタイミングで飛ぶ人が多い」と説明する。
一方、金さんの初任給は8744円。11日の勤務で支給額約9万3000円、前借り5万5000円や諸経費を引いた額だ。同僚は「一生懸命頑張っている。進んで自分で材料を取り、次何すればいいかをわかっている」と褒める。「周りが認めてくれるのがありがたい。声をかけてくれるのは、期待してもらっているということ」。野口さんの失踪については、「頑張りましょうねと声をかけたとしても、それ以上にかける言葉はない」と話す。
取材ディレクターによると、野口さんは失踪の10日後、戻ってきたという。「埼玉の友人宅に逃げていた。友人は生活保護を受けていて、頼ってほしくないと廣瀬社長に電話した。お金も持たず、戻る電車賃もなかったので、社長に振り込んでもらった」。しかし職場復帰したものの、「当日欠勤をしてしまうため、社長が悩んでいる」状態だそうだ。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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