約20年前の日勤教育で連日書かされた感想文(画像の一部を加工しています)

 乗客106人と運転士が死亡したJR福知山線の脱線事故から25日で19年となった。事故の背景には「日勤教育」と呼ばれるJR西日本の乗務員に対する懲罰的な研修があったとされ、ミスを責め立てる企業体質が厳しく問われた。あれから20年近く。かの悪習はどう変わったのか。

 てんまつ書や反省文、リポートの作成――。2007年に国の航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)が公表した最終報告書で明らかにされた日勤教育の内容だ。

 研修はオーバーランや遅刻など乗務時にミスがあった運転士らに対する再教育として実施されていた。通常の乗務から外され、日勤で従事させられることが名前の由来となっている。

 上司から厳しい叱責を受けながら文書作成などの単純作業を何日間も課されるなど、社内ではミスをした社員への見せしめとして恐れられていた。

JR西日本と遺族らで構成された会議。事故防止を優先して社員を罰しないよう日勤教育の見直しを求めた=大阪市北区で2014年4月11日午後2時、久保玲撮影

 事故調は死亡した運転士(当時23歳)のブレーキ操作の遅れが事故原因と推定した。直前にオーバーランをした運転士が日勤教育を受けさせられることを心配し、言い訳などを考えているうちに注意がそれていたとされている。運転士は過去に3度、日勤教育を受けており、報告書は「厳しい日勤教育や懲戒処分を行う運転士の管理方法が関与した可能性が考えられる」と組織の体質を問題視した。

 遺族とJR西などが参加し、事故原因や背景を議論した会議が事故から約9年後にまとめた報告書は、再発防止を優先して社員を罰しないよう企業風土の改善を求めた。これをきっかけにJR西は日勤教育の見直しに着手。16年から遅延や速度超過などのミスが起きても処分しない「非懲戒」制度を導入した。

 研修もシミュレーターを活用するなど実践的な内容に転換した。風通しの良い職場とするため、上司への管理者教育や経営陣とのミーティングなどの取り組みも始めた。

 JR西の最大労組・西日本旅客鉄道労働組合(約2万2000人)が22年に実施した職場向けのアンケート調査では、8割超が「ミスを報告しやすい環境になっている」と回答した。

 一方、人為ミスの低減に向けた体調管理など会社側の支援については、4割超が「あまり充実していない」「充実していない」と答えた。事故のリスクを軽減させるハード面の対策についても、約3割が「実施されていない」「実施に至っていないことが多い」と回答するなど、安全対策は道半ばだ。

 JR西は「引き続き安全の営みや取り組みを確認し、安全マネジメントに関する課題の解決を図る」としている。【井手千夏】

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