流木などが流れ込んだ自宅前で、家の中から取り出したカゴを洗う上野繁子さん(65)=石川県輪島市町野町で2024年9月28日、手塚耕一郎撮影
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 「もうどうすればよいのか……」。上野繁子さん(65)は元気なくつぶやいた。石川県輪島市町野町の南(みなみ)時(とき)国(くに)地区。普段は僅かしか水が流れていない小川を、9月21日朝、濁流が流れ下った。自宅には、大量の流木や土砂が流れ込み、中はめちゃくちゃに。裏を流れていた小川は、せき止められて家の前に流れを変えた。

 上野さんは、金沢で行われる孫の高校野球大会を見るために夫婦で21日午前6時半過ぎに車で自宅を出発し、難を逃れた。近隣住民によると濁流が襲ったのは午前9時前だったという。「自宅にいたら逃げられなかったと思う。戻って家を見た時には涙が出た」と語る。元日の地震で自宅は準半壊の判定。瓦が落ちて雨漏りしていたため、荷物の多くを1階に移していた。豪雨後は、息子宅に身を寄せたが、「仮設住宅に入れるならすぐにでも入りたい」と、この先の生活に不安を感じている。

 珠洲市の大谷地区は、大規模な土砂崩れによって、女性1人が亡くなった。建ち並ぶ建物の1階部分が完全に土砂にのみ込まれている。行政の担当者が調査に訪れていたが、住民が自ら片付けられる状況ではなく、ひっそりと静まり返っていた。

 9月21日から22日にかけて石川県の能登半島北部を襲った豪雨は、輪島市で48時間降水量が500ミリ近くに達するなど、各地で観測史上最大の雨量を記録した。地震の甚大な被害から、まだ立ち直り始めたばかりだった。 今日で豪雨災害の発生から2週間。14人が亡くなり、1人の行方がわかっていない(10月4日現在)。【手塚耕一郎】

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