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 石川県能登半島を襲った記録的豪雨は、各地に大きな傷跡を残した。死者や行方不明者が出たほか、道路の寸断による集落の孤立も。孤立が解消された地域でも、電気や水道などのライフラインが壊滅的な被害を受けた。

【映像】仮設住宅は床上まで浸水…「もう住めないです」住民が知事に訴える様子

 1月の地震から、およそ9カ月、いまなお避難生活が続く中、豪雨被害は地震被災者の仮設住宅にも及んだ。実は大雨特別警報が出された2市1町の仮設住宅の約4割が、河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域内にあった。『ABEMA Prime』では、なぜ洪水浸水想定区域に仮設住宅を建設したのか。復旧、復興には何が必要なのかを考えた。

■能登の現状

 能登豪雨の被害状況は、9月25日20時30分時点で、死者9人、行方不明者6人。孤立集落は、一時100カ所を超えていたが、25日15時時点で16カ所になっている。

 地元選出の立憲民主党・近藤和也衆院議員が、「皆が後片付けに追われている。泥出しは人力が必要で、心も身体もボロボロだが、動かざるを得ない状況だ。ここ数日は晴れていて作業しやすいが、逆に土ぼこりが舞う。山の近くでは水が出ていて、泥だらけになってしまう」と、現地の様子を伝える。

 仮設住宅の4割が浸水想定区域にあった。石川県への取材によると、輪島市・珠洲市・能登町の仮設住宅4731戸のうち、洪水・浸水想定区域内に1931戸(40.8%)が存在した。また、土砂災害警戒区域内は1091戸(23.1%)だった。床上浸水した仮設住宅は、宅田町153戸、浦上32戸、上戸町17戸、山岸町6戸、稲屋町1戸となっている(25日15時現在)。

 では、なぜ危険地域に建設したのか。石川県の担当者に取材をすると「ハザードマップにかからない地域だけでは、需要に建設が追い付かなかった」「山間部で仮設住宅を整備しても時間と費用がかかるうえ、買い物など住民の日々の生活に支障がある」といった理由を挙げた。

 ボランティアによる支援状況はどうか。能登地震の復旧・復興ビジョンアドバイザリーボードのメンバーでNPO法人「カタリバ」代表の今村久美氏は、「ボランティアが大勢入っている状況ではない」と説明しつつ、「復旧経験のない地域住民が力を合わせていて、優先順位を立てられない所もある。どこかが基準を決めれば、動きやすそうだ」と答えた。

 小林史明元デジタル副大臣は、現地視察の経験から、「地域にハブになる人や、ノウハウのある人がいるかで、支援状況が変わる」と語る。加えて、「石川県は、医療機関同士で情報共有する仕組みを独自で作っていて、避難先でも薬やカルテの情報がわかった。被害状況もデジタル化して、共有できるシステムが必要だ。すでに政府は石川県に“ミニ霞ヶ関”を置いている。そこが早急に対応すべきだ」と、情報インフラの必要性を説く。

 災害による規制改革の例として、小林氏は映像による判定を紹介する。「現場で映像を撮り、専門家がオンラインで見れば、現地へ行かなくても、多くの現場を判断できるようになる。馳知事や近藤議員と、効率的な対応を考えたい」。

 これを受けて近藤氏は、「1月の地震では、家屋から荷物を出す危険もあり、一定の専門性が必要だった」としながら、いま必要な「泥出しは、たくさんの人に来てもらい、できるところからやるのが重要だ」と、求められているボランティアの違いを話した。

■復興を主導するのは国?県?

 能登復興財源としては、国が6641億円を予備費から支出、520億円を復興基金に拠出している。また県は9422億円を支出している。これらの資金は、港・道路などのインフラ復旧や、仮設住宅の建設、倒壊した住宅の解体や撤去の加速化などに使われている。

 支援者に対する支援も考える必要がある。ボランティアを差配する職員は、彼ら自身も被災者にもかかわらず、人手不足によって疲弊している。1月からの頑張りも豪雨で台無しになり、心が折れかかっている現状もある。厚労省等から人を派遣する必要があり、その配置は県庁ではなく現場だとの指摘もある。

 小林氏は「災害対応は、被災した市町村の責任になっている」と説明する。「職員も被災者で、判断どころじゃない。県や国が責任を持つ仕組みにすべきだ。熊本地震や能登半島地震でノウハウがたまり、現地に各省庁の責任者が出向き、県や市の判断をサポートするようになった」。

 また、今回は復旧・復興の計画も「県がリーダーシップを執った」という。「福島では市町村が先に復興計画を作ったが、各自治体が『病院が欲しい』と求めて、非効率だった」と東日本大震災時を振り返りつつ、「今回は県と国が一緒に取りまとめて、これからの過疎地域に合わせた自立分散型の計画を作った。非常に先進的なモデルだ」と述べた。

■政府の役割は?「制度論ではなく、現場の運用とリーダーシップだ」

 災害が発生して、国民経済への著しい影響・被災自治体への大きな財政負担がかかると政府が判断した際に、「激甚災害」に指定する制度がある。復旧事業への国の補助率が1〜2割ほど増えるもので、支援対象地域を限定しない「本激」と、地域単位で指定する「局激」の2種類がある。馳知事は25日、豪雨災害の激甚災害指定を国に求める考えを示した。

 近藤氏は「1月1日の地震は、本激かつ特定非常災害だが、今回の豪雨だけでは局激になる可能性がある。地震災害の延長線として、『本激かつ特定非常災害』にすべきだ。そうなれば、国からの支援も高まり、半壊でも公費解体が認められる」と、政治決断を迫る。

 住民の一番の不安は「2回目の公費解体の申請はできるのか」だ。地震では半壊だったが、今回浸水してほぼ全壊になった場合には、申請が可能なのか。「“豪雨災害”にどんな保証があるのか」を明確にするためにも、2度目の激甚災害指定を求める声がある。今村氏は「地震発生から頑張ってきたからこそ、失望感が漂っている。『見捨てていない』とのメッセージが重要だ」と語る。

 政府の役割について、小林氏は「制度論ではなく、現場の運用とリーダーシップだ」と指摘する。コロナワクチン担当大臣の補佐経験から、「部署を横断して、権限者と調整する必要がある。国が県の要請を止める理由は基本的にない。現場のリーダー配置が必要だ」と説いた。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「夢を見せた方がいい」として、「能登は2〜3年すれば儲かる。解体後には建築の需要ができ、そこに労働力を派遣する企業や建設会社はもうかる可能性がある。いま住民と仲良くなって、横のつながりを作ろうという試みを、企業と若者でやるのはどうか。儲かりそうだ能登はというイメージを作るのが大事では」と提案する。

 小林氏は「全国の過疎地のモデル」が、今後能登にできると予想する。「公民館や公共施設をハブにした、自動運転と、そこで交流ができる仕組み作り。物流用ドローンの充電スペースも置く。水道も大都市からの長距離ではなく、水源地にスタートアップの浄水装置をおいて簡易水道を作る。地方の未来は、能登で出来上がっていく」。しかしながら「現状が厳しく、それが永遠に続くように見えてしまう」として、「政府もメディアも、良くなる姿を時間軸で見るべきだ」と語った。

(『ABEMA Prime』より)

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