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 近年、ロケット開発競争が加速するなか、アメリカの「スペースX」も苦戦する技術に、東京・大田区の町工場から挑む男性がいる。独自のロケット開発にかける思いとは?

■宇宙産業へ挑戦…再利用ロケット開発へ

将来宇宙輸送システムの畑田康二郎さん(45) この記事の写真

 大がかりな実験の舵を取るのは、将来宇宙輸送システムの畑田康二郎さん(45)だ。

 畑田さんは今、とてつもなく大きな夢に挑戦している。その夢を実現させる場所は、東京・大田区にある町工場だ。一体、何を作っているのか?

畑田さん
「〇〇〇〇〇〇〇ロケットです」

 しかも、ただのロケットではないという。

畑田さん
「ロケットは通常、使い捨てが一般的。当社はそうではなく、飛んだものが帰ってきて、もう一回打ち上げることができる。そういったタイプのロケットを開発しています」 コストカット競争が激化

 宇宙ビジネスへの民間参入が進み、一回のロケット打ち上げにかかる費用のコストカット競争が激しさを増している。

 こうしたなか、この会社は日本の中小企業などが高い技術で製造した既成の部品で、繰り返し使えるロケットを作ろうとしている。

 一昨年に設立した会社は、その名も「将来宇宙輸送システム」だ。

畑田さん「2028年の目標達成に向けている」 畑田さん
「全部、飛んだものが帰ってきて、もう一回行けるというのが、究極的な理想なんですけど。2028年の目標達成に向けているので、まだ20%ぐらいですかね」

 畑田さんの夢が実現すれば、一回の打ち上げ費用を大幅に削減できるほか、宇宙を経由し、地球上のどこでも一時間で移動できるという。

最大の難関は着陸

 繰り返し使えるロケットにとって最大の難関は着陸だ。

 先日、世界で初めて民間人の宇宙遊泳に成功し、宇宙ビジネスを牽引(けんいん)する「スペースX」も、同様のコンセプトで着陸に何度も挑戦しているが、成功率が低い。

畑田さん
「アメリカのスペースX社が、ロケットの下の段を(海上の)船に着陸させ、回収してもう一回使うということをやっている。それに近いことをより小型のものでやろうとしている」 「ASCA hopper(アスカホッパー)」

 畑田さんが現在開発中で、来年の完成を目指している試作機がある。全長およそ4メートル、直径およそ2メートルの小型のロケットだ。

 高く飛び上がり着地することから、バッタのグラスホッパーにちなんで「ASCA hopper(アスカホッパー)」と名付けたという。

畑田さん
「これが『ASCA hopper』のいわば頭脳ですね。いろいろ電子機器をボックスの中に組みつけをしている。姿勢を制御するとか、いろいろな機能を持った機械を設計通りに組み立てている」

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■エンジンを点火・燃焼の実験…結果は?

■エンジンを点火・燃焼の実験…結果は?

畑田さんは、経済産業省で宇宙産業に関わる法律の整備をしていた

 畑田さんは京都大学を卒業後、経済産業省で宇宙産業に関わる法律の整備をしていた。その仕事のなかで宇宙産業に従事する人たちと接し、その可能性の大きさに気付いたという。

畑田さん
「月に物を運びますとか、小さい人工衛星を作っていますとか、いろいろな面白い人たちがいて、これはすごいなと。これが産業になったら、なかなか楽しいぞと思いまして。最初はそういう役所の立場からやっていたわけですが、これは自分で会社を作ってやるしかないと」

 高度な開発を行うため、元JAXA関係者や宇宙開発に携わっていた技術者およそ90人が働いている。畑田さんについて、スタッフは次のように話す。

榎並京次郎さん(30)
「どんどん理解していこうという姿勢だったり、技術的なところもやりつつ、経営的なところもすごくバランスの良い人」 飯塚翔太さん(36)
「一人の技術者・人間として(耳を)傾けてもらえて、さらにそれを会社でこうしていきたい、ああしていきたいと反映してもらえている。すごく魅力があります」 既成の部品を使うことで、異例の速さで開発が進む

 多くの技術者や企業の協力に加え、既成の部品を使うことで、異例の速さで開発が進んでいるという。

 この日は、和歌山県串本町でロケットエンジンを点火・燃焼させる初めての実験が行われた。成功すれば、開発は次のステップへと進める。

実験は失敗

 エンジンが起動…。しかし、噴射する液体燃料が多すぎて燃料の温度が上がらなかったため、残念ながら実験は失敗に終わった。

 だが、畑田さんは前を向く。

畑田さん
「失敗とはいえ、色々なデータが取れていますから、そこの学びを次に生かしていきたいというのを、今やっているということであります」

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■畑田さんが思い描く未来像

■畑田さんが思い描く未来像

 町工場から宇宙を目指す畑田さんが思い描く未来像を描いてもらった。

思い描く未来像

 畑田さんは「宇宙船によって地球上のどこにでも1時間で行けるようになれば、世界中の人がより深くつながれる。また、宇宙輸送が身近な移動手段になれば、家族旅行で宇宙に行ったり、宇宙で暮らしたり、宇宙人に出会ったりと、新発見があるかもしれない。宇宙開発は未来の世代が持続可能な社会で暮らすために必要な手段で、その実現のために今、地球で暮らす人たちの視点を忘れることなく日々を頑張りたい」と話していた。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年9月24日放送分より)

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