豪雨で屋根まで土砂で埋まった浄正寺の寺院兼住宅で安否不明者の捜索を続ける自衛隊や消防の隊員ら=石川県珠洲市大谷町で2024年9月24日午前9時29分、稲生陽撮影

 石川県の能登半島北部などを襲った豪雨で、県内では2人が行方不明、5人が連絡のつかない安否不明となっている。24日も自衛隊や警察、消防などが懸命の救助作業を続けた。

 珠洲(すず)市大谷町の浄正(じょうしょう)寺にはこの日午前5時、消防や警察、自衛隊で構成された計約200人が集まった。寺に滞在していたとみられる貞廣(さだひろ)一枝さん(79)との連絡が途絶えていたためだ。寺院兼住宅は屋根まで、豪雨により流れ出した土砂で埋まっている。

 「1月の能登地震後、ここに住んでほしくて、寺の雨漏りや瓦の崩れを直したが、余計なことをしてしまった」。近くに住み、作業を見守っていた大工の舟本一男さん(73)は涙を流した。

 舟本さんは2年前の2022年、当時暮らしていた京都から故郷の大谷町に戻った。それから毎日のように、貞廣さんと言葉を交わした。

 元日の能登半島地震後、僧侶でもある貞廣さんから「ここを守りたい」と言われた。寺は地震で被災しており「寺が潰れたままでは地元に人が帰ってこない」と思い、再建に向けて大工の腕を振るった。

 だが、今回の豪雨で仏像も埋もれてしまい「もう再建は無理だ」とうなだれた。

 豪雨前日の20日、自宅の仏壇でお経を上げてもらう予定だった。20日は雨が降ってきたため「お経は翌21日にしましょうか」というやり取りが、貞廣さんとの最後の会話になった。

 24日は朝から捜索活動を見守り、午後3時に泥水で満たされた居間で人が見つかった。その後、死亡が確認された。

 舟本さんは「貞廣さん本人で間違いないだろう。覚悟はしていたので、見つかって良かったと思う。怖かっただろうに……」と話した。

 この日は、塚田川が氾濫した輪島市久手川(ふてがわ)町でも、警察など500人以上の態勢で捜索が続けられた。

 愛知県豊橋市の捜索救助犬活動チームも捜索救助犬1頭を投入した。指揮をとった岐阜市の山田俊彦消防司令長は「流木を避けながら広範囲にわたって捜索している。行方不明の方を一刻も早く見つけるべく、全力を尽くす」と話した。【稲生陽、小坂春乃】

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