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 「『おはよう』『ありがとう』。誰もが毎日のように言っている言葉でも、私たちにはそれがうまく言えません」

【映像】「おはよう」「ありがとう」…絞り出すように話す藤田さん

 声を絞り出すように話すのは、発声障害を抱える藤田菜摘さん。4年ほど前に発症し、去年からその症状が悪化しているという。

 この症状について、新宿ボイスクリニック院長の渡嘉敷亮二医師は「学術的には『機能性発声障害』と呼ばれるものだ。声帯にポリープなどの異常がないにもかかわらず、声がおかしくなる。発声障害の95%以上は、喉が締まって声が出にくくなるパターン。あとは言葉自体が出てこない、あるいは声が“抜けてしまう”パターンもある」と説明した。

 声を出そうという意志に反して、声帯が緊張して声が出にくくなる機能性発声障害。渡嘉敷院長によると、主に10〜20代など若い女性が発症しやすい傾向があり、発症の主な原因は声の酷使やストレスなど心理的な不安があるという。

 20代の頃に異変を感じ始めた発声障害の患者会代表を務める田中美穂さんは「うまく話せないことによって、毎日がつらかった」と振り返る。

 「仕事と子育てが本当に辛くて、部下の育成や責任者会議、クレーム対応など、声が出しにくいことで大きなマイナスとなった。子育てでは、娘が絵本を読んでほしいと頼んでくるのに、うまく読めず娘を怒らせたことも。ある時、自分も辛くなり絵本を投げつけて、出ない声ながら『ママ声が出ないの!』と言ってしまったこともある。娘はバン!という音に驚いて大泣き。それにハッと気づいた私も惨めで」

 発声障害はあまり認知されておらず、周りに理解されづらく、医師が気づかないケースも多い。田中さんも最初はポリープを疑われたり、心療内科を紹介されたりするなど、診断までに時間がかかったという。

 主な治療法としては、声帯を離す手術や、過剰な収縮を防ぐためのボツリヌス注射がある。ただし、ボツリヌス注射の効果は3カ月程度であるため定期的に注射を打つ必要があるという。実際に治療を受けていた田中さんも、頻度や費用を考慮した結果、手術に踏み切り、10年かけて現在の声まで回復したという。

 仕事に支障が出たり、子育て中も思うように言葉で伝えられず、大好きな歌も歌えなかったと振り返る田中さん。発声障害には、当事者以外には伝わらない辛さがあると話す。

 「聴覚・視覚障害にはインプットできない辛さがある。だが、発声障害は症状自体も辛いが、アウトプットできない辛さが非常に大きい。理解されない、知られないことが一番辛かった。発声障害になると人と関われなくなる。コミュニケーションが取れない中、一生懸命とろうとしたあげく怒られて、説教されて。『私は発声障害です』と言いにくく、伝わりにくいという壁があるため認知度も上がらない」

 今まさに当事者として向き合う藤田さんが願うのは、周囲からの理解だ。

 「一番辛いのは理解してもらえないこと。声の病気なんだと知っていただけるだけで気持ちが楽になります。そして、私たちの聞きにくい声にほんの少し耳を傾けていただけたら本当にうれしいです」
(『ABEMAヒルズ』より)

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