木造復元を目指す名古屋城天守閣のバリアフリー化を巡る市民討論会で市民から差別発言があった問題で、名古屋市の検証委員会は18日、「市長、副市長をはじめとした関係者の人権感覚の希薄さが背景・遠因にある」とする最終報告書を公表した。再発防止策として、実効性のある人権条例の制定などを求めた。【真貝恒平】
問題が起きたのは、昨年6月3日に開かれた討論会。一部の参加者から車いす利用者に対する差別的な発言があり、言い争う事態になったが、会場にいた河村たかし市長や市職員らは制止できなかった。河村市長は最後のあいさつで「熱いトークもあってよかった」と述べ、その後、市の対応に批判が集まり、河村市長も謝罪。市は昨年8月、外部有識者と市幹部による検証委を設置した。
最終報告書では、市が討論会で差別発言防止の事前アナウンスがなかった点や、市が差別発言が出た後も人権を守るスタンスを示せなかった点を問題視。「職員として差別発言に対する問題意識が欠如していた」と結論づけた。
こうした点を踏まえ、再発防止策を提示。既存の障害者差別解消推進条例を改正し、市を相手に助言、あっせん、勧告などの手続きを行うことができるようにすることや、庁舎内に人権に関する部署の設置などを求めた。
視覚障害がある弁護士で検証委の田中伸明委員長は記者会見で「事前や体制の整備ができず、市全体で人権への意識が希薄であった」と問題の背景を説明。「この問題を機に多様性を認め合う、それぞれが生きやすい社会をつくってほしい」と述べた。
一方、検証委が実施した市職員へのヒアリングでは、バリアフリー整備を巡る市長や副市長の言動をパワーハラスメントと感じる職員がいたことが判明。報告書では発言がパワハラに該当するかどうかの判断はしなかったが、河村市長は、これまでの経緯などを検証する第三者調査委員会を庁舎内につくることを明らかにした。
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