大地震で津波が来た際に浮遊しながら命を守る大型シェルターの商品化を目指す静岡市清水区の業者が18日、海上での安全性を確かめる公開実験を三保半島の折戸湾で行った。防災の研究者をはじめ地元関係者ら131人を乗せたシェルターは安定したままボートに引かれて湾内を1周し、実験は成功した。
シェルターの製造を手掛けるのは、建築・不動産業の「小野田産業」。2017年から浮遊型津波シェルターの製造に乗り出し、これまでに8人用や14人用の小型タイプを全国の海辺の会社、個人、幼稚園などに計約40基販売してきた。
大型シェルターの開発には東海大や静岡理工科大などが協力。全体が発泡スチロール製で、約8メートル四方の底板(厚さ30センチ)の上に高さ130センチ、厚さ15センチの外壁とトイレ2基が付く。素材には軍事利用もされる特殊樹脂のコーティングが施され、耐衝撃性や耐摩耗性が高められているという。販売価格は2400万円前後を予定しており、億単位の建設費がかかる津波避難タワーより安価だとしている。
同社によると、普段は公園や広場などに置き、非常時に住民らが逃げ込んだ後は、津波の状態によって係留したまま浮かぶか、流れに逆らわず漂流物と一緒に漂って破壊や転覆を避けるなどの使用法を想定している。
大人数を乗せるのはこの日が初めてといい、参加者は全員ライフジャケットを着用して、揺れ具合や防水性を確かめながら実験に臨んだ。自らも乗った開発アドバイザーの浅沼博・千葉大名誉教授(減災サステナブル技術協会会長)は「海辺での暮らしには魅力があるが、常に津波の恐怖が付きまとう。住み続けるには、こうしたシェルターが近くにあることが大切。自治体などに関心を持ってほしい」と話した。【丹野恒一】
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