ナシ園に啓発チラシを配布し、盗難被害の注意を呼びかける千葉県警八千代署員(左)=八千代市で2024年9月12日午前10時9分、林帆南撮影

 ナシの収穫シーズンを迎え、千葉県警は盗難被害の警戒を強めている。そんな中、10日には八千代市で約500個が盗まれる被害が発覚。八千代署は啓発チラシを用意するなどし、地域と連携した防犯対策を進めている。

 「悔しい」。八千代市島田でナシ園を営み、500個(計約14万5000円相当)の盗難被害に遭った三橋一義さん(79)はため息をついた。

ナシの盗難被害について説明する三橋一義さん=千葉県八千代市で2024年9月11日午後3時29分、林帆南撮影

 事件は9日午後1時15分~翌10日午前7時半の間に発生した。同日朝、三橋さんの長男らが収穫のため農園に足を運んだところ、甘みの強い品種「あきづき」の木3本分が盗まれていることに気づいた。

 約1ヘクタールのナシ園はネットで囲われているが、入り口のひもをほどけば誰でも入れる。同市内でナシの栽培を始めて20年以上、少量を盗まれることはあったが、これほど大量に盗まれる被害はこれまでにはなかった。収穫時期を迎えたナシが盗まれていたことから「(食べごろが)分かっている犯人の仕業ではないか」と推測する。

 JA八千代市によると、市内には約50軒のナシ農家の組合員がいるが、大量の被害に遭ったとの報告は近年、なかったという。

 一方、県外では、ナシのほかモモなどの果物が大量に盗まれる被害が相次いでいる。過去には犯人が検挙され、転売目的が動機とみられる事例もあった。こうした事態に、同署は被害を未然に防ぐため、市内の農家に啓発チラシを配ることを考えた。チラシを販売所に張ってもらい、盗難の被害を警戒していることを犯人に知らしめるほか、住民や農家の意識を高める狙いもある。今回の大量被害を受け、同署では今後、警察官によるパトロールも強化していく。

 12日にチラシを受け取った同市の黒沢さえ子さん(54)のナシ園では、侵入防止のネットで囲い、監視カメラを付けて対策している。しかし、「ネットを切り裂いて中に入られてしまえばそれまで。個人の対策にも限界がある」と危機感を募らせる。

 被害のあった地区を担当している睦駐在所の日高忠義巡査長(51)は「犯人の逮捕に向けて全力で捜査し、警戒は署員一丸となって強化していきたい」と引き締めた。【林帆南】

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