証人尋問を終え、会見を開いた弁護団=熊本市中央区の県弁護士会館で2024年9月13日午後3時52分、野呂賢治撮影

 1985年に熊本県松橋町(現宇城市)で男性の刺殺体が見つかった「松橋事件」で、服役後に再審無罪が確定した宮田浩喜さん(2020年に87歳で死去)が、証拠隠しなどの違法捜査で長期間の身柄拘束を受けたとして、国と県に計約8500万円の国家賠償を求めた訴訟の証人尋問が13日、熊本地裁(品川英基裁判長)であり、事件に携わった当時の検察官と警察官の男性(ともに70代)は「覚えていない」「分からない」などと繰り返した。

 宮田さんは85年1月に逮捕され、殺人罪などで起訴された。1審途中から無罪を訴えたが、90年に懲役13年が確定。服役して99年に仮出所した。2012年に再審請求し、19年3月に再審無罪が確定している。

 事件では宮田さんが有罪とされた唯一の証拠は逮捕後の取り調べで「(凶器とされた)小刀にシャツ片を巻き付け、使った後に燃やした」とする自白だったが、県警は起訴後にシャツ片を発見し、検察側は公判に証拠として提出しなかった。

 証人尋問で元検察官の男性は「この事件が再審無罪になっていたことも知らなかった」などと答え、当時の捜査状況などについても「分からない」「覚えていない」と繰り返した。元警察官も同様の受け答えに終始した。

 弁論後、弁護団は記者会見を開き、国宗直子弁護士は、元検察官が「覚えていない」「わからない」と繰り返し、再審無罪になっていたことも「知らなかった」と述べたことに対し「自分のした起訴が人の人生をめちゃくちゃにしたかもしれないのに、あの態度はない」と憤った。

 次回12月13日に結審し、年度内に判決が出る見通し。【野呂賢治】

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