大阪・関西万博に関する関係者会合で発言する大阪府の吉村洋文知事(左手前)。奥右から2人目は岸田文雄首相=首相官邸で2024年9月10日午後1時9分、平田明浩撮影

 2025年大阪・関西万博(4月13日~10月13日)が開かれる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で開業を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)について、大阪府と大阪市は10日、万博会期中のくい打ち工事を当初予定から約2カ月延期するほか、工事の休止日を増やすと発表した。騒音や交通渋滞の低減が期待できるという。また、運営事業者が違約金なしで撤退できる「解除権」が6日付で失効したと明らかにした。

 万博会場の隣接地で行われるIR工事を巡っては、騒音や粉じん、景観などへの影響を懸念した日本国際博覧会協会(万博協会)が吉村洋文知事に会期中の中断を求めていた。

 府市によると、25年5月から予定されていたくい打ち工事を約2カ月遅らせ、重機の稼働台数や工事音のピークを万博閉幕後にずらすという。低騒音の工法や機械を採用し、防音シートなども設置する。こうした対策により、万博会場に届く騒音レベルは、会場内のイベントの音量よりも小さくなるとしている。

 来場者の増加が見込まれる開幕直後やゴールデンウイーク、お盆などの期間は休工日を増やす。また、残土置き場は万博会場から離れた場所に設け、散水して粉じんを減らす。工事現場には高さ2メートルの壁を設置して、景観にも配慮する。必要に応じて追加対策も検討できるよう、万博協会と国、府市、IR運営事業者、施工業者による連絡調整会議も設ける。一連の対策費用は運営事業者側が全額負担し、公費投入はしない。

 運営事業者の「大阪IR」と府市は26年9月までとしていた解除権の失効で合意した。大阪IRは資金調達に見通しが立ち、市の土壌対策も適切に実施されているとして「事業の前提条件が整った」と判断した。近く市から土地の引き渡しを受け、準備工事に入る。建物の本体工事は25年春ごろの着工を予定している。

 吉村知事は10日、首相官邸で対策工事の内容を岸田文雄首相に報告した。報告後、報道陣の取材に応じ、「2030年秋のIR開業はほぼ確実になった。世界最高水準のIRを開業させたい」と述べた。一連の対策については、経済界や博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長の理解も得ているという。

 府市などによると、IRの初期投資額は約1兆2700億円。開業後は年間約2000万人の来場者と約5200億円(うちカジノ部分約4200億円)の売り上げを見込む。府市は事業者からの納付金とカジノ入場料で年間約1060億円が入ると想定している。【鈴木拓也、町野幸、内田帆ノ佳】

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