映画「春の香り」の出演者らに囲まれる坂野貴宏さん(中央)と和歌子さん(右から5人目)=愛知県江南市の市民文化会館で2024年9月10日午後4時6分、川瀬慎一朗撮影

 悪性脳腫瘍と闘いながら漫画家を目指し、18歳の生涯を全うした坂野春香さんの実話を基にした映画「春の香り」の出演者らによる舞台あいさつが10日、春香さんが生まれ育った愛知県江南市の市民文化会館であった。2025年3月から順次全国公開される予定。

 春香さんは小学6年だった2013年10月、左頭頂葉に6センチの脳腫瘍が見つかり、手術で摘出したが悪性腫瘍と判明した。抗がん剤治療を中学1年の夏まで続け、その後症状は落ち着いたが、高校3年の19年秋に腫瘍が再発し、20年12月に帰らぬ人となった。

 この日は出演者や監督らが登壇。主演の美咲姫さん(20)は「春香さんの『人の心に何かを残したい』との思いのバトンを受け取った。生きることや小さな幸せについて考えてほしい」と語った。

 映画のほとんどは江南市内で撮影。父親役で同市出身の松田一輝さんは「自分が育った町で映画を撮る日々が不思議で幸せな気持ちだった」と振り返った。母親役の桜井淳子さんは「感情がぶつかり合うシーンが本当に多かった。公開まで楽しみに待っていてほしい」とアピールした。

 春香さんの母和歌子さん(51)は「娘の生涯をもう一度輝かせてもらいうれしい。心に残る映画になってほしい」と期待した。

 父貴宏さん(53)と和歌子さんが応募した家族の歴史をテーマにした作品を募集する「人生十人十色大賞」(主催・文芸社、後援・毎日新聞社営業総本部)がきっかけで春香さんの実話は書籍化され、映画の原作となった。【川瀬慎一朗】

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