東京電力福島第1原発=福島県大熊町夫沢の展望台から2024年6月8日、尾崎修二撮影

 東京電力は10日、福島第1原発の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の初回収に向けた試験取り出しに2号機で着手した。取り出し装置を押し込むパイプの接続順を誤る初歩的なミスで初日に作業を中断したため、工程は約3週間遅れた。強い放射線を放つ燃料デブリの回収は廃炉の最難関とされ、作業は正念場を迎える。

 東電はこの日、格納容器内部にある圧力容器を支える土台(ペデスタル)底部の燃料デブリを採取するため、釣りざおのような装置の先端をパイプで押し込み、格納容器内外をつなぐ穴に入れた。

 今後、装置の「さお」に当たる部分をペデスタル上部まで押し込む。その後、つかみ器具をケーブルで底部へ垂らし、小石状の試料を回収する。試料をつかむまで約1週間、つかんでから取り出すまで約1週間、計約2週間かかる見込みだ。ただ、東電はミスを受けて社員による確認項目を追加したため、さらに長引く可能性もある。

福島第1原発2号機の燃料デブリ取り出しのイメージ

 作業員の被ばくを抑えるため、試料の放射線量の上限を毎時24ミリシーベルトにし、これを超えれば取り出さない。採取した試料は茨城県内の施設で分析し、燃料デブリの今後の回収方法や保管容器の検討に役立てる。

 当初は8月22日に着手する予定だったが、ケーブルを通すパイプ5本の順番が誤っていることが直前で判明し作業を延期。斎藤健経済産業相が東電に報告を求め、約3週間中断した。

 試験取り出しが始まったことで、事故後30~40年で廃炉を終えるとする国の工程表は、最終段階の「第3期」に移る。ただ、試験取り出しは装置の不具合などで当初の目標から約3年遅れている。

 燃料デブリは1~3号機に計880トンあるとされ、東電は全て取り出すとしているが、今回回収するのは最大3グラムにとどまる。東電は今後、規模を段階的に拡大して大規模取り出しにつなげる方針だ。ただ、その工法は3号機では検討が進んでいるが、1、2号機は決まっていない。【高橋由衣】

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