京都府内の公衆浴場(銭湯)の入浴料を議論する府の審議会は4日、大人を現行の490円から510円、中人(6歳以上12歳未満)を150円から160円に値上げするよう、西脇隆俊知事に答申することを決めた。燃料費や人件費などの高騰で経営環境の悪化が続いているため。小人(6歳未満)は60円に据え置く。
銭湯の入浴料は都道府県によって違い、各都道府県の審議会などで議論され、知事が決定する。
府によると、7月19日現在で、入浴料の全国平均は大人461円、中人165円。大人の最高は東京都の550円、最低は山形県の300円という。答申を受けて最終的に知事が料金を決めるが、府の入浴料の改定は、物価高騰などの影響で大人が450円から490円に値上げした2022年以来となる。
1975年、府内には502カ所の銭湯があった。その後は減り続け、2002年に300カ所を、12年に200カ所を下回り、23年は120カ所となった。22年からの1年間で11カ所減っている。23年の年間延べ入浴者数は392万2680人という。
審議会で府は通常の算定方法とは別に、人件費の現状や必要となる設備の改修費を加味した入浴料の独自算定方法も提示。それに基づくと、大人は550円、中人は170円、小人は70円で収支が均衝する。審議会は値上げは必要との認識でまとまったが、全国最高額に並ぶ大人550円への急激な値上げには慎重な意見も出て、更なる値上げについては今後も審議会で議論することとなった。【久保聡】
「営業コストに追いつかない」経営者悲痛
府内120カ所の銭湯のうち、実際に営業する88カ所を対象に府が2023年に実施した「経営実態調査」からは、銭湯経営者の悲痛な声も垣間見える。
回答があった77カ所の平均営業時間は8・61時間。経営者の年代は、60~70代が53%を占めた。また、55%の経営者が勤務時間が9時間以上と答えた。
使っている燃料の種類は、費用が安い「廃油のみ」が最も多い32・5%。前年は「重油のみ」が最多だったが、「廃油のみ」が急増している。複数回答ありで「銭湯を継続・振興させるのに必要なもの」を尋ねたところ、95%が「補助制度の拡充」、38%が「料金改定」を選んだ。
23年調査では新たに設備の状況も質問。改修が必要との回答が最も多かったのは、浴室と浴槽だった。しかしそれぞれの改修に必要な経費は、平均で浴室が約944万円、浴槽が約864万円にも上っている。
自由記述を見ると、「燃料費、電気代の高騰と、設備交換、修理費が数年前と比較しても異常なほど値上がりしている」、「人件費は上昇する。廃業する銭湯は増加すると思う」、「営業コストに銭湯料金が追いつかない」といった悲痛な意見も。行政に補助を求める声も多数あった。【久保聡】
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