栃木県矢板市の秋の風物詩として親しまれている「やいた花火大会」について、大会実行委員会(千野根友和委員長)は、2024年10月の開催を中止すると発表した。来場者の安全対策に必要な人員と予算が確保できないためという。実行委は「25年以降、より持続可能で地域に愛される花火大会として再開を目指したい」としている。
やいた花火大会は、市民の手作りイベントで地元を盛り上げ地域活性化を図ろうと、地元住民や会社経営者らが組織する実行委が07年に初開催。実行委などによると、当初会場としたキャンプ場は数年で来場者があふれ、12年からは収穫後の農地を会場として、2万人以上が訪れる矢板市で最も集客数の多いイベントとなった。19年は台風19号、20、21年は新型コロナのため中止され、22年は一般客の入場を制限。5年ぶりの通常開催となった23年は、過去最多の約2万7000人でにぎわった。矢板市は24年度予算にも補助金として200万円を計上していた。
一方、運営費の大半を賄う協賛金は、シャープ栃木工場(同市早川町)の閉鎖(18年)などもあり減少傾向に。有料席の導入やスポンサー専用エリアの設定なども試みたものの、不足分を補うには至っていないという。韓国の雑踏事故(22年10月)などを受け来場者数の増加に見合った安全対策が求められる中、ボランティアが集まらず有償スタッフを増員、原料の高騰で花火の価格も上がるなど経費が膨らみ、実行委によると24年の予算1400万円では数百万円が不足する見通しとなっていた。更に23年の開催では、会場周辺の迷惑駐車など新たな課題が出たという。
例年、職員約40人が誘導員を務めてバックアップする市商工観光課は「5年ぶりの通常開催は多くの市民に喜ばれた。今年も楽しみにしている人が多い」と、一度は開催に向けた再検討を要望したという。実行委は「市から積極的な支援の提案もあり、規模縮小も含め再度協議したが、現状の体制での大会運営は困難と判断した」と説明した。【藤田祐子】
警備費用の増大、燃えかす苦情も
花火大会を巡っては全国的に、警備費用の増大や会場周辺に落下する花火の破片(燃えかす)を理由に中止が相次いでいる。
2024年の入間川七夕まつり(埼玉県狭山市)、春日井市民納涼まつり(愛知県春日井市)は、警備の人件費高騰と民家に落ちる燃えかすの苦情増加を理由に、まつりのうち花火の打ち上げを取りやめた。船橋港親水公園花火大会(千葉県船橋市)、鳴門市納涼花火大会(徳島県鳴門市)は大会自体が中止された。また、保津川市民花火大会(京都府亀岡市)は雑踏事故対策として無料エリアを廃止し、全席有料で開催された。
びわ湖花火大会(大津市)は23年8月の開催前に、交通渋滞や騒音、ごみの投げ捨てなど住環境への悪影響が大きいと訴える地元自治連合会が開催反対の決議文を提出した。
やいた花火大会は、会場が農地のため燃えかす被害の苦情はない一方、来場者の増加に伴って渋滞や迷惑駐車、ごみの投げ捨ての苦情が寄せられたという。
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