9月1日は「防災の日」だ。8月には南海トラフ地震臨時情報が初めて発表され、台風も相次ぎ襲来。人々の防災意識は高まっているが、いざ手をつけようとすると何から始めればよいのか。防災用品を専門に扱う東京都千代田区の「セイショップ」を訪ねた。
夏場の災害で心配なのが暑さだ。在宅などで避難する場合、ネックリングやクールタオルも停電時は冷蔵庫などで冷やせなくなる。そこで注目されているのが大容量のポータブル電源。スマートフォンの充電はもちろん、扇風機や小型の冷蔵庫、電子レンジなどに対応したモデルもある。
セイショップでは、容量が1500ワット時強でスマホを70回ほど充電できるモデルと、充電用のソーラーパネルをセットで購入する人が増えているという。価格は計30万円を超えるが、もしもの備えに加えて、高騰する電気代の負担を少しでも軽くしようと「日常使い」をしたい人たちに支持されているようだ。
同店を運営するセイエンタプライズの広報担当で防災士の資格を持つ布山夕紀(ふやまゆき)さんは「自分が使いたい家電製品に合わせた容量のモデルを選んで」と助言する。
久しぶりに備蓄食を確認したら賞味期限が切れていた――という人には、超長期の備蓄食「サバイバルフーズ」も選択肢になりそうだ。一般的に保存期間3~5年の備蓄食が多いなか、高度なフリーズドライ加工技術などで25年の長期保存を可能にしたという。メニューはシチューやカレーがあり、水や湯を注いでも、そのままでも食べられる。
備蓄品を消費しながら入れ替えるローリングストックも推奨されているが、「これなら入れ替える手間を減らせるうえ、長期的にはトータルの購入コストも抑えられる」(布山さん)。
一方、非常時の「食」で見落としがちなのが栄養バランス。避難中は命をつなぐことが最優先されるため、手っ取り早く空腹を満たし、エネルギーを補給できる炭水化物がどうしても多くなりやすい。実際、元日の能登半島地震の後、セイショップには被災地の栄養士会からサプリメントの提供要請があったという。
布山さんは「過去の大災害でもミネラルやビタミン不足が体調不良を引き起こすケースがあった」と話す。長引く避難生活で栄養が偏り、健康リスクが高まることには注意が必要だ。
災害への備えについて、布山さんは「安心につなげるため、まずはできることから。例えば好きなお菓子を保管するなど、何でもいいので始めてほしい」と呼びかける。防災用品は「9月1日」などと日付を決めて、年に1度は点検することを推奨している。【嶋田夕子】
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