能登半島地震の影響で多くの墓石が倒れたままになっている墓地=石川県珠洲市で2024年8月13日、阿部弘賢撮影

 能登半島地震から1日で8カ月が過ぎた。石川県内の避難所では、8月27日の時点でも約770人の被災者が過ごす。一方、被災地の墓地では墓石の倒壊などが相次いだ。ただ、生活の再建がままならない中、墓の修理は後回しにせざるを得ない状況だ。

 能登半島の最北端に位置する珠洲(すず)市では、元日の地震で震度6強の揺れを観測した。共同墓地では、100基以上の墓石のほとんどが倒れたり、地割れにより傾いたりした所があった。

 だが、市内の石材店は1軒しかない。地震から7カ月余りが過ぎても、倒れたままの墓石や、内部に雨が入らないようブルーシートをかぶせた墓も少なくない。

 「また大きな地震が来て倒れるかもしれないし、仮設住宅を出た後の資金も必要。ご先祖さまには申し訳ないけれど、お墓の修理はしばらく様子を見るつもり」

 墓の周囲を掃除していた70代の女性は、ブルーシートで覆われた墓を見つめて、そう語った。

 西勝寺(珠洲市)でも、130基ほどの墓のほとんどが倒れた。墓は修繕しても余震があれば再び倒れてしまいかねず、修繕に踏み出せないという。

 珠洲市に隣接する輪島市の浄明寺では、約500基の墓のうち8~9割が倒れた。業者が修繕に入ったが、今も3分の2ほどが地震直後のままだ。

 住職の崖(きし)啓互さんによると、輪島では火葬後に遺骨をいったん木製の「骨箱(こつばこ)」に入れ、納骨の際に骨箱から骨を出して直接墓に納めることが多い。

 このため、地震による墓の倒壊で、中の骨がむき出しになった墓も目立つ。応急処置として、ブルーシートをかけているという。

 業者不足で、墓石を引き上げる小型の重機が初めて入ったのは7月中旬ごろ。崖さんは「倒れたままの状態は痛ましい」と嘆いた。【阿部弘賢、国本ようこ、面川美栄】

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