東北電力は22日、青森県東通村の東通原発1号機を再稼働させる前提となる安全対策工事について、2024年度中の完了を断念すると発表した。樋口康二郎社長は青森県の宮下宗一郎知事と面会し、今後、追加の津波対策が必要になると説明。「現時点で明確なスケジュールを想定することが困難」と述べ、25年9月末ごろまでに目標とする完了時期を示すとした。
05年に運転開始した東通原発1号機を巡り、東北電は14年6月、原子力規制委員会が東京電力福島第1原発事故後に定めた新規制基準への適合性審査を申請。しかし審査が長期化して安全対策工事の完了時期をたびたび繰り延べ、6回目の延期となった。
東北電によると、地震や津波に関する審査の過程で、原発の耐震設計の目安「基準地震動」と「基準津波」について、今年に入り規制委から「おおむね妥当」との判断を得た。
一方、今後行われる設備面での審査に向け、東北電は1000万年に1回程度の頻度で起こる、基準津波を上回る規模の津波を想定する必要に迫られる。現在の防潮堤は新規制基準前に設置したもので、今後進める追加の津波対策が、審査や安全対策工事の完了時期に影響すると判断した。
宮下知事は樋口社長に「誠に遺憾。地域住民に再稼働自体への不安を与えかねない」と苦言を呈した。面会後には再稼働時期が見通せない現状について「地元東通村も含めて下北半島の地域経済にも大きな影響があるだろう」と話した。【江沢雄志】
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