台風10号の強風の影響で倒れた給食センターの門扉=鹿児島市で2024年8月29日午前11時36分、平川義之撮影

 鹿児島県に上陸後、丸1日以上かけて九州を斜めに進んだ台風10号は30日昼前、大分県から瀬戸内海に抜けた。進行スピードが遅い「ノロノロ台風」の雨や風による影響は長時間に及び、九州の大動脈の九州新幹線は2日間にわたって運休したほか、都市部の商業施設が軒並み休業するなど都市機能はまひし、市民生活に影響が広がった。

 「出勤しなければならないが、JRが動かない」。30日午前、福岡市博多区のJR博多駅で同区の会社員、小林虎太郎さん(26)は困惑した表情を見せた。駅を発着する新幹線や特急を含む在来線は、29日から順次運転を休止し、30日も始発から終日運休。「運休の情報は見ていたが、天気もひどくなくなったので午後からは再開すると思ったのに……」と途方に暮れた。

大雨で警報級になる可能性がある期間

 海外から飛行機で福岡空港に到着し、鹿児島市の自宅に戻れずに足止めされていた60代男性は「九州新幹線が動かないので、ホテルを取った。長い移動で疲れた」とこぼした。駅構内では行く当てもなくたたずんでいる外国人旅行者たちの姿も多く見られた。

 福岡市中心部の商業施設も店を閉め、30日は博多阪急▽大丸福岡天神店▽福岡三越▽岩田屋本店▽ミーナ天神▽福岡パルコ――が休業。天神地下街の人通りもまばらだった。29、30の両日休業した百貨店の担当者は「2日間の休業の影響は大きい。インバウンド(訪日客)需要が好調で、月末の目標に向けて順調な売り上げだっただけに残念だ」と肩を落とす。

 30日午前には福岡市地下鉄が運転を再開し、午後には西鉄天神大牟田線や貝塚線、西鉄バスも順次再開するなど、台風が離れるにつれて少しずつ都市機能も復旧した。

 JR九州によると、31日は九州新幹線が始発から運転を再開するほか、在来線は鹿児島線の門司港―荒尾間、日豊線小倉―大分間、篠栗線は安全が確認できた場合は始発から通常運転する。長崎線や筑肥線、佐世保線は始発から通常運転する。一方、九州南部では多くの路線で始発から運転を見合わせる。

 大分県由布市の大分自動車道由布岳パーキングエリア付近では、本線の外から土砂が流入し道を塞いだ。NEXCO西日本が状況を確認しており、通行止め解除の見通しは立っていない。【長岡健太郎、森永亨、平川昌範】

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