厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 2024年度の最低賃金(時給)は29日、全都道府県で金額が決定した。厚生労働省のまとめによると、全国平均は1055円で、現時点より51円上がる。7月末に厚労省の審議会が示した引き上げの目安額は50円だったが、人手不足や隣県との格差への危機感から各地で上乗せが相次ぎ、中でも徳島県は84円と目安を34円上回る異例の決定。目安を上回ったのは27県で、10月以降に各地で適用する。

 最低賃金は、労使の代表と有識者からなる厚労省の審議会が目安額を示し、各都道府県の地方審議会が決める。目安額は地域の経済状況に応じたA~Cの3ランクに分けて示され、今年は地域間格差の是正に向け、全国一律の50円としていた。

 目安額に大幅に上乗せしたのは、もともと最低賃金の金額が低いCランクの地域が中心。例年よりも決定の日付を遅らせ、他県の動向をにらみながら審議する傾向もみられた。

 目安額を34円上回ったのは、全国で2番目に最低賃金が低かった徳島県。鳴門海峡を挟んで淡路島(兵庫県)につながることから人手不足への危機感が高まっており、決着は21日から29日にずれ込んだ。26日には後藤田正純知事が、最低賃金を所管する厚労省幹部と面会し、公労使による審議に「県が関わる新たな仕組みが必要」と訴えていた。

 目安額に9円上乗せしたのが、岩手県と愛媛県。岩手県は昨年、8月上旬に目安額通りの決定をしたものの、その後各地で目安を大幅に超える決定が相次ぎ、全国最下位に転落。今年は昨年より20日遅い28日に、59円の上乗せをするとした。愛媛県は、瀬戸内海を挟んで広島県に接することから、人材流出を懸念する声もあり、59円増の956円とした。

 この他に目安額を大きく上回ったのは、8円の島根、7円の鳥取、6円の佐賀、鹿児島、沖縄など。Cランクでは13県すべてが目安超の引き上げをした。東京や神奈川、大阪、愛知など都市部を中心とした20都道府県は目安通りだった。

 最低賃金に詳しい北海道大学の安部由起子教授(労働経済学)は「賃金の高い都市部が目安通りの決定をする一方、最低賃金の低い県で目安超の決定が相次いだため、結果として地域間格差は縮まった」とみている。【奥山はるな】

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