県漁連の野崎哲会長(右)と意見交換する岸田文雄首相=いわき市の小名浜魚市場で2024年8月24日午後0時46分(代表撮影)

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出から1年となった24日、岸田文雄首相が福島県いわき市の小名浜魚市場を訪れ、県漁業協同組合連合会(県漁連)の野崎哲会長と意見交換した。岸田首相は「政府として万全を尽くす」と語ったが、野崎会長は納得しきれているわけではない漁業者の思いを伝えた。

 岸田首相は午後0時20分ごろ、市場に到着。野崎会長らが迎える中、施設を視察したり、メヒカリやカツオの刺し身など地元産の「常磐もの」を試食したりした。野崎会長とは約20分間にわたり、福島の漁業の課題などについて話し合った。

 会合後の記者会見で岸田首相は、福島の漁業の復興について「必要な対策を取り続けることは、たとえ長期になろうとも全責任をもって対応する」とした。中国などの日本産水産物の輸入禁止措置に対しては即時撤廃を求めるとし、「科学に基づく専門家同士の対話もしっかり進めることで正しい理解につなげたい」と話した。

 野崎会長は「処理水の最後の一滴が流されるまで我々は了解せず、反対であると伝えた。福島の漁業者にとって廃炉は、のどにささったトゲとして残るだろうが、温暖化による漁場形成の変化など、漁業者が本来抱える課題に向けて力を注げるようにしてほしいとお願いした」と述べ、注文を付けた。

 一方、JRいわき駅前では労働組合など7団体の約30人が抗議集会を開き、放出の中止を求めた。「政府や東電は『海洋放出は問題ない』『福島の復興のため』と言うが、真っ赤なうそだ」などと訴えた。

 また、福島県産の水産物は海洋放出の前から中国の禁輸措置の対象地になっており、海洋放出によって福島県外の水産関係者に大きな影響が出ている。ホタテ加工品を扱う北海道紋別市の水産関係者は取材に「1年前に岸田首相が『国が全責任を持って対応する』と言ったにもかかわらず、政治力も資金力もない我々のような中小企業は今もほとんど救済されていない。福島県外の関係者のもとにも直接足を運ぶべきだ」と批判した。【柿沼秀行、尾崎修二】

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