工期延長について説明する日本原子力発電の坂佐井豊・東海事業本部長(右)=水戸市笠原町の県庁で2024年8月23日午後4時2分、川島一輝撮影

 日本原子力発電は23日、来月としていた東海第2原発(東海村)の安全対策工事の完了時期を、2026年12月に延期すると正式に発表した。コンクリートが十分に行き渡っていないなどの施工不良が判明した防潮堤の基礎部分は残したまま補強工事を進める方針だ。【寺田剛、川島一輝】

 18年に原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査に合格して以来、工期の延長は、20年と22年に続き3度目となる。原電は24年6月、規制委の審査会合で「作り直しも含めて対応方針を整理し示す」よう求められていた。

 原電によると、薬剤やセメントを入れて地盤を改良したり、地盤に鉄の杭(くい)を打ったり、基礎部分の内側に鉄骨やコンクリートを入れたりする。工事計画の変更を23日、規制委に届け出た。

 こうした工事をすると、施工不良が判明した部分の強度がないことを考慮しても安全性を確保できるほか、基礎部分を作り直さず残すことで安全が損なわれるまでの余地があるとしている。原電は近く規制委の審査会合でこの方針を説明し、審査をクリアした上で、工事を再開したい考えだ。

 県庁で記者会見した原電常務の坂佐井豊・東海事業本部長は「心配をおかけしたが、より安全性があがると考えている。引き続き安全第一で工事を続けたい」などと説明した。2350億円の対策工事費については、「設計でなく施工上の問題」(原電)のため変更はないという。

 原電は23年4月に一部の鉄筋が浅くなっている不備を、同年6月にコンクリートの充塡(じゅうてん)不足や鉄筋のゆがみを把握したが、その間に現地を視察した東海村議や周辺6市村の首長に説明せず、同年10月に入って公表。その後も工事完了時期への影響について「精査中」などとして詳しい説明を避けてきたため、大井川和彦知事や東海村の山田修村長らが対応を批判していた。

 原電によると、深さが50メートルある構造物のため、全容調査に時間がかかったという。坂佐井本部長は「規制委の審査会合の議論の方向性が見えてきたのも今年6月だった」と述べ理解を求めた。

 東海第2を巡っては、再稼働に反対する住民らが12年に運転差し止めを求めて提訴。21年3月の1審・水戸地裁判決は、実現可能な避難計画が整っていないとして運転差し止めを命令。東京高裁で控訴審が続いている。

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