上皇ご夫妻が22日から静養のため滞在されている長野県軽井沢町の夏を彩るユウスゲの花。ご夫妻と軽井沢の住民の長い交流を象徴する植物でもある。
ユウスゲは高原などに自生する多年草の植物で、夏に黄色の花を咲かせる。かつては軽井沢の草原でよく見られ、住民らは干した花を保存食として利用することもあったという。
軽井沢はご夫妻が1957年夏に出会った思い出の地。結婚後は夏になると静養のため家族で訪れ、住民らと交流を深め、自然を楽しんだ。ご夫妻は住民たちから贈られたユウスゲの種を住まいの庭で育て、82~84年には苗を町植物園に届けた。
平成に入ってから、夏の静養先は栃木県の那須御用邸や静岡県の須崎御用邸が中心となり、軽井沢での静養は90年8月を最後に一時途絶えた。それでもご夫妻の思いは深く、上皇后美智子さまは2002年、軽井沢に咲くユウスゲを懐かしんで歌を詠んでいる。
かの町の野にもとめ見し夕すげの月の色して咲きゐたりしが
軽井沢での静養は03年夏に再開され、ご夫妻は植物園に足を運んだ。そこで当時の園長から軽井沢でユウスゲが減っていることを聞き、この年の秋から08年まで皇居・御所のユウスゲから採った種を植物園に贈り続けた。植物園はこの種から育てた苗を公共施設の庭などに植えたり、みどりの日(5月4日)に町民に配布したりし、ユウスゲを増やす活動をしている。
新井勝利園長は「(上皇ご夫妻は)若い頃から軽井沢とのゆかりが深く、親しみを持っている住民も多い。ユウスゲの配布を通じて地元の植物への理解を深めてもらうとともに、ご夫妻の関わりに思いをはせてもらいたい」と話す。
ご夫妻は代替わりで住まいを皇居から仙洞仮御所を経て、赤坂御用地にある仙洞御所へと変えたが、いずれの庭にもユウスゲが植えられ、今年の夏も花を咲かせた。【高島博之】
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